野球善哉BACK NUMBER
そろそろブレークの兆しが見える!?
広島・岩本と日ハム・中村が急成長。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/30 12:40
一瞬の輝きを残した中村に、次世代スターの片鱗を見た。
この日は2回裏カブレラに、そのストレートを狙い打たれて本塁打を許した。しかし、圧巻だったのはその後で、カブレラの第2、第3打席には初球でインコースのストレートを投げ込んでいるのだ。第2打席はストレートの制球が定まらずに、勝負球に変化球を選んで打たれたが、第3打席は2死・一、二塁の場面で、最後までストレート勝負で押し、どん詰まりのセンターフライに斬った。
5回で降板し、その後の投手陣が打たれて彼に勝ち星は付かなかった。だが、一瞬の輝きだけは見せ、彼はマウンドを降りたのだ。「思い切って投げ切ろうと考えて腕を振った。踏ん張るところは踏ん張れたと思う」と、試合後の彼は短いコメントを残している。
この試合後、中村は登録を外された。
梨田監督はその理由を「まだ無理させるような段階じゃないからね。今日も、それもあって5回で降ろした。一度上げて、1回だけ投げさせるよりも、3回くらい登板させたいというのがあった。中村は3回も先発したので、登録を外す。10日後以降に昇格させるかどうかは、可能性はあるけど、今は何とも言えない。身体もまだまだ鍛えようがあるし、無理をする段階ではないから」
これからクライマックスシリーズ進出へ向けての戦いが熾烈になる日ハムにとって、中村が再昇格、再登板となるのはそう簡単ではないかもしれない。しかし、ここで、3試合に登板したこと、しかも1勝を挙げているという実績や経験は必ず生きてくるはずだ。
逃げるのではなく真っ向から立ち向かっていった彼のスタイルは、スターの魅力があふれている。