野球善哉BACK NUMBER
そろそろブレークの兆しが見える!?
広島・岩本と日ハム・中村が急成長。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/30 12:40
柔らかくバットを振り抜く能力に強振が加われば……。
強く振り込んでいくのではなく、軽打を心がける。もっと強く振れそうでもあったが、今の岩本はその軽打で活路を見出しているようだ。試合後、岩本を直撃した。なぜ、そこまで軽打にこだわるのか、と。
「状況に応じてですよ。バットを合わせる時もありますし、強い打球を打とうと思うときもありますし……。ただ、僕は力んでしまうところがあるので、今はすごく(軽打を)意識しています」
強く振るより、まずは軽打を意識する。そうしておいて甘く来たボールを打つのだという。この日まで、岩本はすでに10本塁打を放っている。それについても「ホームランの時は強く振れているかなというのはあります。それも、状況に応じて振った結果ですよ」というのである。
柔らかくバットに当てていくセンスは、今の時点では及第点を与えていいだろう。そこに強く振るスイングを付け加えていけるかどうか。彼のさらなる成長はそこにあるのかもしれない。岩本は照れた表情で、自ら思うその先の展望まで話してくれた。
「自分でも、自分がどんな選手かまだ分かっていないところもあって……今は力むので合わせているイメージです。長距離ヒッターというよりも、中距離ヒッター。今はそう思っています」
翌日の対巨人戦で、9回裏に起死回生の2点本塁打を含む2本塁打を放った。さらに3戦目も9回裏に1点差に迫る本塁打を記録している。力みが感じられない軽打を心掛ける雰囲気のままで、強く振り抜けていた打球だった。やはり、彼はスラッガーなのだ。充実の2年目を経て、さらなる成長を予感させている。
ダルビッシュ似の18歳はストレートで押しまくる投手!!
“埼玉のダルビッシュ”
中村勝は春日部共栄高校時代そう呼ばれていた。何せ、その端正な顔立ちがダルビッシュを想像させるのだ。だが実際に見た彼は顔だけではなく、投球フォームまでもがダルビッシュを想像させるものだった。左肩の開きを抑えようという意識の強い左手の使い方などは特に似ている。ストレートの最速は141キロ程度。本家ほど速くもないが、球速以上に打者が打ち難そうにしている。なにより、ストレートで押していく彼の投球スタイルには惚れ惚れした。
8月27日のオリックス戦。彼は5イニングで86球を投げ、うちストレートが57球もあった。プロではそこまで速くないというストレートで、ここまで押していける心意気には魅了された。この日の試合前、梨田監督が、中村の魅力をこう話していた。
「初登板の時、先頭打者が外野のエラーで出塁したんです。そして、結局、三塁まで行ったんかな? でもその回、中村はロッテ打線を3三振にして無失点だった。球自体はまだまだこれからの投手だけど、持っている選手だなと」