野球善哉BACK NUMBER
そろそろブレークの兆しが見える!?
広島・岩本と日ハム・中村が急成長。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/30 12:40
昨年のコラムで、次シーズンへの期待を込めて中田翔やT-岡田を取り上げたことを懐かしく思う。今では当然に見える彼らの活躍だが、当時、どこまで現在の活躍ぶりを想像できただろうか。
しかし、今思えばT-岡田にしても中田翔にしても、その兆しはあったのだ。
T-岡田は昨シーズン二度目の昇格となった中盤以降に初本塁打を放っており、そこから瞬く間に7本塁打まで記録してしまった。打率は1割台と低調に終わったとはいえ、それでも、あの手応えは良い経験になったはずだ。中田にしても、昨年チームで優勝を経験。胴上げにこそ参加できなかったが、日本シリーズには参戦できた。今季序盤は怪我もあったが、それも含めて経験から多く学ぶものがあって、今の活躍があるのは間違いない。
そんな彼らの姿を思い浮かべていると、来シーズンのブレークを予感させる選手は今年もいるのではないかと思えてきたのである。
広島の岩本貴裕と日ハムの中村勝が、来季への可能性を感じさせる良質なプレーを見せている。特にこの1週間、彼らのパフォーマンスには魅せられた。
軽くバットを合わせて広角に安打を量産していく岩本。
入団2年目で24歳の岩本は1年目こそ、14試合の出場にとどまったが、今シーズンは4月の末に1軍昇格。一度登録を外されたものの、6月30日の再昇格後の7月4日には横浜戦でプロ初本塁打を放っている。それ以降は1軍に定着している。
軽打、軽打、軽打……。
試合前のバッティング練習。岩本は大振りをしない。緩い球を逆方向へ軽く合わせていくだけのスタイルに終始する。亜細亜大学時代、3年春に1試合3本塁打を記録するなど、大学No.1スラッガーだった昔の姿を知る者からすると物足りなくも思えるが、それが今の彼が持つ良さなのだ。いや、むしろ軽くバットを合わせただけで広角に安打を量産し、それでいて甘い球が来ると引っ張り込む力強さには、ベテラン選手の懐の深さまでをも感じさせてくれる。
8月26日の阪神戦は岩本の長所が見えた試合だった。
第1打席、2死一塁から打席に立った岩本はスライダーを呼び込み、中前へ痛烈な打球をはじき返すクリーンヒット。その後の先制点につなげた。第2打席は、真ん中にきたカーブを軽く叩き二直。阪神の二塁手・平野の好守によって阻まれたが、これまた痛烈な打球だった。
第3打席セカンドゴロのあと、第4打席は無死満塁で回ってきた。どうしても追加点が欲しい場面で、岩本は左翼へ犠牲フライを放つ。高めの球を上手く払っての技あり左翼フライ。貴重な追加点を挙げた。