序盤、ドルトムントの奇襲にバイエルンの出足が鈍る。

　そんな中、圧倒的にバイエルン有利との下馬評とともに迎えた決勝戦は、予想とは異なる展開で幕を開けた。

　まるでタイトルにかける思いがプレッシャーになったかのように、バイエルンの選手たちの出足は鈍かった。

　序盤の20分間、最近3シーズンの対戦のなかでベストとも言うべきパフォーマンスを見せるドルトムントの“奇襲”に対し、バイエルンは完全に後手を踏んでいたのだ。

　今季のドルトムントは、とりわけCLの舞台では守備ブロックを作るために下がって相手を待ち構えることが多かったが、この日は、前線の選手たちが相手のDFラインにプレッシャーをかけるなど、バイエルンに思うようにゲームを作らせない。安定感のあるプレーではチーム内の誰にも負けない主将ラームがパスミスから決定機を許すなど、普段のバイエルンからすればありえないような展開だった。

　それでも、14分にゴール前でブラシュチコフスキがクロスに合わせたシュートはノイアーが間一髪左足でセーブするなど、どうにかドルトムントにゴールを割らせなかった。ドルトムントが圧倒的に支配しながらもゴールを奪えない展開が続くと、前半30分過ぎから少しずつバイエルンが本来の力を発揮していくようになった。

名手ノイアーとのPK対決はギュンドガンに軍配。

　ハーフタイムを終えると、流れはますますバイエルンへと傾いていった。

　右サイドのロッベンは高い位置をとるようになり、前線の選手たちのポジションチェンジも頻繁に行なわれるようになった。

　たびたび、相手ゴールに迫ってゆくバイエルン。そんな中、後半15分だった。中央をドリブルで運んだロッベンが左にいたリベリーにパスを預ける。エリアに入ったところでリターンを受けると、GKバイデンフェラーに寄せられながらもゴール前に送った。これをマンジュキッチが押し込んでついにバイエルンが先制。ウェンブリースタジアムに地鳴りのような大歓声が湧きおこると同時に、スタンドの半分を赤く染めたバイエルンサポーターは一斉に立ち上がって赤いフラッグを一心不乱に振り回した。

　両チームの力の差を考えれば、これが勝負を決めるゴールとなっても不思議ではない。だが、ドルトムントはあきらめることはなく、反撃をしかけていく。

　後半23分、バイエルンのセンターバック、ダンテがロイスの腹部をエリア内で蹴りあげてしまい、PKを献上。

　ちょうど3週間前、両チームがリーグ戦で対戦した際にもドルトムントにPKが与えられているのだが、このときはレバンドフスキが蹴って、ノイアーがストップしていた。それを受けて、ドルトムントはキッカーを代えてきた。この日のキッカーはギュンドガン。見事にノイアーの逆をつくキックで1－1の同点。昨シーズン、大事な場面でPKを決め切れなかったバイエルンと同じ過ちは冒さない――そう高らかに宣言するかのようなゴールだった。

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