ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
メキシコ国境からPCTハイク開始!
ガラガラヘビ&エンジェルと出会う。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/05/14 10:30
乾燥した砂漠地帯を歩き始めた井手くん。風が強く、ホコリっぽいため、すぐに鼻くそが溜まるという。
時間つぶしに、太平洋を目指して空港から西へ。
この時点で昼前。代替便の出発は22時過ぎだ。LAで思わぬ時間が出来たので、僕はカリフォルニアの太陽を浴びるべく、外に出ることにした。
とはいえ、土地勘がなく、行く当てはなかったので、コンパスを頼りにひたすら西に向かうことにした。太平洋にぶつかることを期待したのだ。
大通りをひたすら歩くこと2時間。ビーチに着いた。ランニングやヨガ、フリスビーを愉しむ人たちの姿は、寝不足で疲れていた僕の目を輝かせた。
この海の向こうから来たんだなあと、感慨深く波を見ていると、あっという間に日が暮れた。
まずい、そろそろ空港に戻らないと。
歩いて帰るのは時間的にリスキーだと思い、ウォーキング中の女性2人に、空港への交通機関を尋ねた。JessicaとMittal。彼女たちは僕の話を面白く思ったのか、ウォーキングが終わったら空港まで車で送ってくれるという。なんとフランクなんだろう。知らない人の車に乗ってはいけませんと教えられた気がするが、お互いのことをウォーキング中に語り合ったので、もう「知らない人」ではあるまい。
真っ暗なサンディエゴの空港で迎えてくれた髭面のエンジェル。
空港に着いてWi-Fiに接続すると、早くもJessicaからメールが来ていた。
「両親がオレゴン州のベンドに住んでいるので、近くまでいったら一報してほしい。彼らももてなしたいと話している。家に帰ってあなたが話していたトレイルのことを調べたのよ。とても楽しそうでクレイジーね。あなたの出発の日に会えて良かったわ。これってミラクルよね。とりあえず映画『サン・ジャックへの道』を見るわ。マーティン・シーンが好きだからね。グッドラック!」
その映画にマーティン・シーンは出ていたかなあ、と思いつつも、僕も彼女たちとの出逢いに感謝のメールを返し、携帯を切る。離陸の時点でエンジェルからの返信はない。不安だ。
真っ暗なサンディエゴの空港に着くと、大柄な髭面の男性がパタゴニアのウェアに身を包み、ポンポンを持って出迎えてくれた。彼がエンジェルだ。来てくれたのか。こんな時間に申し訳ない。代替便は遅れに遅れ、着いたのは深夜2時近くだった。
疲れている僕を察してくれたのか、あるいは僕の英語の拙さをすぐに理解したのか、多くを語る前に車に案内され、エンジェルの家へ向かう。彼はまだ「知らない人」だったが。