ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
メキシコ国境からPCTハイク開始!
ガラガラヘビ&エンジェルと出会う。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/05/14 10:30
乾燥した砂漠地帯を歩き始めた井手くん。風が強く、ホコリっぽいため、すぐに鼻くそが溜まるという。
宿を借りたエンジェルにはどら焼きで感謝の気持ちを。
翌朝、フローリングに広げた寝袋の中で目を覚ますと、昨晩は暗くて気づかなかったが、広いダイニングにハイカーがうろうろしている。優に20人はいるだろう。
誰に話しかければいいか解らず、おろおろしていると、家主と思われる人物が話しかけてくれた。軽い自己紹介の後、家での過ごし方や近隣の施設の説明を受ける。空港で慌てて買ったどら焼きを渡したが、感謝を伝えるには十分でなかっただろう。
ちなみに、昨晩空港に迎えに来てくれたのはオーストラリア人で、1年間にPCTを含むアメリカの三大トレイルを全て歩いてしまった、超有名人だった。このレベルまでいくと、旅人というよりアスリートだ。
メキシコ国境の小さな町、CAMPO(カンポ)に送ってもらったのはそれから2日後。食糧の買い出しや補給物資の郵送、ハイカーたちと親睦を深めるのに忙しく、あっという間に過ぎてしまった。
メキシカンビールを片手に踏み出した初めの一歩。
メキシコ国境へ向かう朝。曇天の中、他のハイカー達と共に車に乗り込んだ。道中、大きな雨粒がフロントガラスを叩き、先を案じる。それでも、国境地点に着く頃には少しずつ晴れ間を見せ、僕は日本人ハイカーのGOKUさんと写真を取り合いながら、ゆっくりと歩き出した。
おっと、日本人なのにGOKU? 実はこの不思議な名前、「トレイルネーム」といい、トレイル上での渾名なのである。様々な国や異なる背景を持ったハイカーたちは、こうしたトレイルに特有の文化によって、心地よい付き合いが出来る。
「千里のみちも一歩から」
PCTのオフィシャルガイドブックに、何故か載っていた唯一の日本語だ。メキシカンビールをレッドブルガールズのようなエンジェルから受け取り、僕は「はじめの一歩」を踏み出した。ホロ酔い気分だったのは、きっとビールの為だけではあるまい。