日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
マリノスへの献身を誓った中村俊輔。
W杯を終え、次なる夢へ向け始動!!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph bySankei via Getty Images
posted2010/07/24 08:00
中村俊輔の気持ちを悟ったイビチャ・オシムの言葉。
イングランド戦を終えて、オシムはグラーツ市内のホテルで会見を開いた。ひとしきり日本代表の戦いに対する感想を述べた後で、中村へのエールとも受け取れるような言葉を残している。
「どんな環境であっても、自分がいいサッカー選手であるということを示し続けることがチャレンジ。日本から海外に渡って活躍を続けることも難しいが、海外から日本に戻ってきて活躍を続けることが難しいのは、みなさんもよくご存知でしょう。海外でプレーした選手にとって、Jリーグで成功することは大きなチャレンジなんです」
ピッチの硬さを含めた環境面や、テンポなど戦い方の違いが、思った以上に海外帰りの選手たちを苦しめているのは事実だ。実際、ドイツで実績を残した高原直泰も浦和レッズで活躍できていない。2月にマリノスに移籍して以降、もちろんその難しさを中村自身も実感している。
日本代表でやり残したことはまだあるはずだ!
中村はこれまでの自分を「山もあれば谷もある」と振り返る。
W杯メンバーから落選した'02年の日韓W杯のときにはセリエAのレッジーナに移籍して残留に貢献し、セルティックで迎えたドイツW杯後の'06~'07年シーズンは欧州CLのマンチェスターU戦で直接FKを決め、そしてスコットランドリーグ連覇の原動力となってリーグMVPに輝いている。彼にはW杯の苦しい経験をバネにしてきた歴史がある。
そして彼は今、Jリーグでの成功を胸に、谷から再び山に目を向けた。今の彼の目には、この新しいチャレンジのことしか映っていない。
中村が「代表引退」という決断を下したことは今もって残念だと筆者は感じている。プジョルやアンリとは違って、中村が日本代表でやり残したことはまだあるように思えてならないからだ。しかし、この谷を克服しなければ先に進めないという中村の考えも痛いほど理解できる。
まずはいかにして山を登っていくか。オシムの言う「難しいチャレンジ」を克服することができれば、谷底にある今とは違った風景がまた見えてくるかもしれない。
さて、2010年の南アフリカW杯に向けた「日本代表の旅」は終わりを告げた。そして次のブラジルW杯に向けた新しい旅はもうスタートしている。