日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
マリノスへの献身を誓った中村俊輔。
W杯を終え、次なる夢へ向け始動!!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph bySankei via Getty Images
posted2010/07/24 08:00
スペインの初優勝で幕を閉じた南アフリカW杯の決勝から、はや2週間が過ぎようとしている。
この間、準決勝のドイツ戦で決勝ゴールを挙げるなど優勝に貢献したプジョルがバルセロナでのプレーに専念するために代表引退の意向を示していることが報じられ、その翌日には長らくフランス代表を牽引してきたアンリもMLSのニューヨーク・レッドブルズに移籍し、新しいユニホームを手に「今が潮時だと思う」と代表引退を表明した。
プジョルもアンリも現在32歳。大会前に代表引退を決めていたポルトガル代表デコもまた同じ年齢である。
そしてデンマーク戦の日に32歳の誕生日を迎えた日本代表の中村俊輔もパラグアイ戦の後に代表引退をほのめかした。代表における今後の活動について「もういいよ」と静かに答えたのだった。
「耐えるだけで精いっぱいだった」南アW杯の1カ月間。
中村は32歳のバースデーを挟んだ今回の大会を「W杯での集大成」と考えていた。風邪でコンディションを崩したこともあって不完全燃焼に終わったドイツW杯の雪辱を果たすべく、南アフリカW杯に懸ける思いは人一倍強かった。
しかし蓋を開けてみれば、左足首のケガの悪化で韓国戦後に離脱したことを発端にレギュラーの座は戻らないまま。本大会を目の前にして岡田ジャパンは守備偏重型にシフトし、控えに回った中村の出番は後半から途中出場したオランダ戦のみに終わった。
「チームが勝つことがすべて」――。
中村は先発から外されても意欲的に練習に取り組み、試合では選手たちにアドバイスを送るなどしてチームを献身的に支えた。だがその一方で、心の苦しみと戦った1カ月でもあった。報道陣の前では何も喋らないことも多く、「耐えるだけで精いっぱいだった」とパラグアイ戦の後に正直な思いをも吐露している。
日本代表の10番にとって、W杯後の次なる目標とは?
今大会に懸けてきた分、苦しみは余計に大きかった。チームとして結果は出ても、個人的には心残りのまま終わったことは間違いない。しかしながら中村は「集大成」とする信念を曲げなかった。大会終了と同時に代表引退を示唆したのは、もしかすると、代表に対する思いを敢えて断ち切るためではなかっただろうか。
「あとはマリノスでいいプレーをというか、チームに貢献することだけを考えたい」
再出発に際する決意表明として中村は、今年復帰した横浜F・マリノスへの思いを南アフリカで最後に語ったのだった。
W杯後の次なる目標――。
日本代表前監督のイビチャ・オシムがイングランド戦の前、グラーツに滞在した日本代表の宿泊地を訪問したことがあった。中村の姿を見つけたオシムは「近い将来、またヨーロッパでプレーするつもりはないのか?」と声をかけている。
そのとき、彼はこう返したという。
「マリノスで成功すること以外に考えていません」
その中村の言葉に、オシムは大きく頷いたそうだ。