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菅野、藤浪、大谷と絢爛豪華な面々。
'13年シーズンの新人王レース大予想。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/04/18 10:30
巨人の菅野は4月13日のヤクルト戦において、多彩な球種を使った安定感ある投球を見せ、8回を3安打1失点に抑えて2勝目を挙げた。
セ・リーグは巨人・菅野智之が候補ナンバーワン。
菅野智之(巨人) 3試合、2勝0敗、防御率2.35
藤浪晋太郎(阪神) 3試合、1勝1敗、防御率1.29
小川泰弘(ヤクルト) 2試合、2勝0敗、防御率0.00
三嶋一輝(DeNA) 7試合、0勝0敗、防御率3.00
小熊凌祐(中日) 7試合、0勝0敗1ホールド、防御率1.69
平井諒(ヤクルト) 7試合、1勝1敗、防御率1.42
[註]成績は4月14日現在
昨年12月、『ジャイアンツ2013』(読売新聞社)の独占インタビューで菅野に話を聞いたとき、「(自分の一番の長所は)コントロールだと思います」「僕は基本的にスライダーピッチャーなので、右バッターのインコースにも投げないと」「腕を振ってから一拍遅れて出てくるような感覚なので、本当にいい時のカーブは振られないですね」などの発言を聞いて、それまで抱いていた一本調子のピッチャーという印象とは違うなと見る目を変えた。
自らのピッチングを客観的に見られる能力(客観視)、それを理屈で伝えられる言語能力、さらに喋ったことをペナントレースの中で再現できる実践力、この3つを備えている選手はベテランまで見回しても多数派ではない。
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日本ハムの1位指名を拒絶して1年間浪人生活を送ったブランクをマイナスときちんと認め、そのブランク期間を利用してジム通いで体幹を鍛え、その結果ステップ幅が6足半から7足に広がったとも言う。そういうプロへの心構えを聞いて、10勝近く勝てる投手だと確信できた。
一流選手の風格を醸し出す阪神・藤浪晋太郎が対抗馬。
菅野に備わっている「一流選手の3要素」は阪神のゴールデンルーキー、藤浪にも備わっている。以下は雑誌『アマチュア野球33号』(日刊スポーツ出版社)の取材で実際に耳にした言葉である。
夏(昨年夏の甲子園大会)は内角に1つ強烈な球を投げることによって外の球にバッターが踏み込めなかったね、と振ると「1球見せてしまえば、2ストライク目にそれを投げてしまえばこっちのものなんで。1球焼きつけてしまえばスライダーが生きてくるんで」と答え、不調になったらどこをチェックしますか、という質問には「変化球が1つのバロメータになることは確かですね。スライダーが引っ掛かりすぎるとか、抜けたり安定しないのは体が開いている証拠だと思うので」と即座に答が出てくる。こういうアドリブと言語能力は一流選手ならではのものである。
オープン戦時にはクイックが遅いと批評されるが、初勝利を挙げた4月14日のDeNA戦で快足・荒波翔の二盗を封じたときは、荒波に「ビデオで見てきたよりもクイックが速くなっていた」と言わせた。この修正能力も一流選手の資質と言っていいだろう。
この2人がセ・リーグ新人王の本命、対抗で、もう一人挙げるとすれば、N・ライアンばりの投球フォームから140キロ台後半のストレートと強気の内角攻めで広島、中日相手に自責点0のピッチングを展開した小川泰弘が伏兵という位置づけ。今後の三すくみの争いが楽しみである。