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菅野、藤浪、大谷と絢爛豪華な面々。
'13年シーズンの新人王レース大予想。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/04/18 10:30
巨人の菅野は4月13日のヤクルト戦において、多彩な球種を使った安定感ある投球を見せ、8回を3安打1失点に抑えて2勝目を挙げた。
大谷翔平の新人王奪取のネックになる“二刀流”。
セが先発投手同士による争いなら、パ・リーグはリリーフ投手と打者2人による新人王争奪戦と言っていい。私が新人王候補に推す8人は次の通りだ。
大谷翔平(日本ハム) 18打数5安打、打率.278、打点2
金子侑司(西武) 52打数19安打、打率.365、打点9
鍵谷陽平(日本ハム) 7試合、1勝0敗2ホールド、防御率1.35
則本昂大(楽天) 3試合、1勝1敗、防御率3.93
高堀和也(楽天) 8試合、1勝0敗1ホールド、防御率1.17
松永昂大(ロッテ) 6試合、0勝0敗3ホールド、防御率1.42
西野勇士(ロッテ) 2試合、1勝0敗、防御率0.93
佐藤達也(オリックス) 8試合、0勝0敗6ホールド、防御率1.86
大谷の投手、野手を含む総合的な野球人としての素質は群を抜いている。これまでも江川卓(作新学院)、桑田真澄(PL学園)、松坂大輔(横浜)、前田健太(PL学園)など、投打で注目された超高校級はいたが、大谷の素質はその上を行くと思う。
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ゆったりした間(ま)を保ちながら「打って、投げられる」というのは高校卒1年目の18歳には至難の業だ。打者の18歳は速さに負けたくないのでストレートのタイミングだけでボールを待ち、投手の18歳は勢いでプロの打者を圧倒したいと気持ちが急いて投球フォームが忙しくなる。しかし、大谷にはそういうところがない。
打者大谷はストレートのタイミングで待っていても変化球への対応を頭の片隅に入れ、投手大谷の投げ始めからフィニッシュまでに要するタイムはおよそ2.2秒。プロの平均的タイムが1.8~1.9秒台であることを考えれば、2.2秒台というタイムは非常にゆったりしている。投打ともプロの“速さ”に負けていないというのが見事である。
大谷の不安要素はずばり“二刀流”だ。二刀流は壮大なロマンと実験なので今年1年は継続されるだろう。だが、打撃が好調でも二軍での登板(4月11日)のため前日の10日、当日の11日、一軍戦を休まなければならない。出場制限をどうしても受けることになるので、成績の面において、二刀流は大谷の新人王争いにはマイナスになると断言できる。
中島、中村の不在が西武・金子侑司の新人王を後押し!?
金子侑司は中島裕之(遊撃手)のメジャー移籍、中村剛也(一、三塁手)の負傷欠場が追い風になっている。ドラフトに話をさかのぼらせると、3位指名という高い順位に驚かされた。走守のレベルは非常に高いが、バッティングに関してはプロはおろか、大学レベルで見ても高くはなかった。
西武スカウト陣もそれは承知していたらしく、立命館宇治高校時代のバッティングのよさを“持って生まれたセンス”と評価し、指名に向かったという。目の前の現実しか見ないと思われがちだが、5年前にさかのぼってその選手の本質を見ようとするのもプロのスカウトなのである。金子が新人王を獲得すれば、西武スカウト陣の凄さはさらに多くのマスコミの注目を集めるはずだ。