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<葛藤を経た21歳の現在地> 石川遼 「沈黙を破る」~米ツアー1年目の挑戦~
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byTaku Miyamoto
posted2013/03/23 08:02
この2年は自分のゴルフを“壊し”にかかっていた。
'11年シーズン途中から2年をかけて、石川は左右に曲げるボールの習得にかかり、ショットのバリエーションを増やしていく。同時にアンジュレーション(起伏)が大きいアメリカのグリーンを見据えて、高い軌道のアイアンショットにも取りかかった。
「'11年と'12年のシーズンは自分のゴルフを壊しにかかっていたんです。だから結果が出なくても、どこか仕方ないと思う自分がいた。悔しさや喜ぶ気持ちを我慢して言わなかったわけではないんです。本当に自分がそう思わなかっただけなんです」
ゴルフを壊した――それは石川の口から初めて聞いたフレーズであり、本心をひた隠しにするような沈黙の理由に違いなかった。
だが、自身のゴルフを壊しては建て直すスクラップ&ビルドに費やす間、回り慣れた日本のゴルフ場すら違う風景に映った。
「日本のコースが難しく感じられるようになった。それは下手になったからではなくて、自分への要求が高まったからだと思います」
より精確な一打を求めたが、コース上だと思い通りにならない葛藤。
例えばピンまで103ヤードの距離を狙う場合、'10年頃の石川ならば100もしくは105ヤードという5ヤード刻みのショットで対応していた。ところが今は違う。精確に103ヤードを狙う距離感を自分に求めている。
「21歳という今の年齢は、同じスイングで100球を打ったら、100球が同じところに飛ぶような技術を身につける時期だとも考えているんです」
ちょうど1年ほど前のことだ。突然、石川が「ロボットになりたい」と発言したことがあった。練習場では当たり前に打てるショットも、コース上に出ると思い通りに打つことができない。当時の状況を、石川は「薔薇」という漢字になぞらえて回想した。
「薔薇という漢字は、いくらなんでも100回ぐらいノートに書き連ねれば覚えられますよね。でもしばらく経って改めて『書いてみろ』と言われると忘れてしまっている。そこでパッと書くことができて初めて、自分に蓄積された知識となる。ゴルフの練習も同じで、あの頃はまだ100回ノートに薔薇を書いている段階だった」