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<日本バレー界期待の星> 八子大輔 「この試練を成長の糧に変えてみせます」 

text by

市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byKenta Yoshizawa

posted2013/03/07 12:00

<日本バレー界期待の星> 八子大輔 「この試練を成長の糧に変えてみせます」<Number Web> photograph by Kenta Yoshizawa

夢は「オリンピック出場じゃなく、金メダルです」。

 心の傷として残るインカレのように、今の状況も自分で乗り越えなければいけない試練だということは、八子自身が一番わかっている。

「今までの自分はカラーが明確な、強いチームの中に入って、そこの色に染まって活躍してきたんですよね。大学を卒業して進路を決めるとき、これまでのようにカラーのはっきりしたチームに進むのでは、今までのバレー人生と同じだと思いました。そうじゃない、違う経験をしたかった。そういう意味でJTを選んだので、今のこの状況は自分でどうにかしなくちゃいけない。こういう経験をするために自ら進んで選んだ道なのだと思っています。今は苦しいですけど、これを乗り越えれば、チームも、また僕個人もひと回り大きく成長できると思います」

 最後に八子に夢を尋ねると「オリンピックで金メダルを取ること」と断言した。昨年、ロンドンオリンピック出場を逃している男子バレーにとっては、世界の頂点に立つのはとてつもなく大きな夢だ。

「確かに大きな夢ですけど、それがバレー選手としての一番高い目標じゃないですか。それ以上はない夢。やっている以上は一番上を目指してやらないといけないと思います。オリンピック出場じゃなく、金メダルです」

八子が、日本のバレー界で希有な存在である理由。

 幼いころから恵まれた体格が注目を集め、八子の周りにはいつも、進むべき方向へと彼を導いてくれる人がいた。「流れに身を任せてきた」と八子は語るが、しかし裏を返せば、それは八子自身に「手を差し伸べたい」と思わせる魅力があるからだ。

 夢は金メダルときっぱり言える姿には、周りの者にも同じ夢を見させる強い力がある。そして194cmの長身を生かした気持ちのいいスパイクや、思い切りの良いサーブには、チームの劣勢を優勢に変える力がある。そんな「陽」のパワーを持つプレイヤーは、日本のバレー界では希有な存在だ。

 今年の秋、日本でグランドチャンピオンズカップが開催される。ちょうど4年前の同大会が八子にとっての全日本デビュー戦だった。大学時代に初めて代表入りを果たしたものの、一昨年のワールドカップも含め、いつも、どこかしら故障を抱えながらの全日本帯同だった。そのため自分が持つ本来の力を、国際舞台に思い切りぶつけた経験がない。

世界と戦うために何が必要か、八子はすでにわかっている。

「それだけに、グラチャンのメンバーには選ばれたいと思っています。国際舞台を経験してからは守備の大切さを痛感しました。僕のセールスポイントは高さだと思っていますけど、世界には僕より高い身長で、レシーブもして、攻撃もして……というオールラウンドの選手が大勢います。自分もそういうプレイヤーにならないと世界で通用しないし、全日本では自分がその役割を担う存在にならないといけないと思っています」

 世界と戦うために何が必要か、八子はすでにわかっている。

「まずはVリーグで結果を出さないと、全日本の候補にも名前が上がらないでしょう。とにかくJTでの自分の役割はスパイクを決めること。攻撃の中心として結果を出して、アピールしたいですね」

 初めてチームの柱として闘うVリーグで八子が何かをつかんだとき、全日本男子の未来にも新しい風が吹き込むはずだ。

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