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<アスリートが選択するとき> 浅尾美和 「あのときの決心があったから」
text by
川上康介Kosuke Kawakami
photograph byYoichi Nagano
posted2013/01/17 06:01
際立った注目度と「勝てない」という現実。
葛藤と戦い続けた競技生活から退いたその表情は
とても晴れやかだった。ビーチバレーを背負ってきた彼女が
3年前に下した大きな決断と引退までの胸中を率直に語った。
葛藤と戦い続けた競技生活から退いたその表情は
とても晴れやかだった。ビーチバレーを背負ってきた彼女が
3年前に下した大きな決断と引退までの胸中を率直に語った。
「もしビーチをやってなかったとしたら、今頃は地元の三重で、保育士かケーキ屋になっていたと思います。母の同級生がケーキ屋さんをやっていたので、まずはそこにアルバイトで入って、いずれ社員にしてもらいたいなと思っていたんです」
そう言って屈託なく笑う表情は、とても晴れ晴れとしている。無理もない。長年背負ってきた“ビーチの妖精”の看板をようやく下ろすことができたのだ。
「引退の気持ちが固まったあと、私みたいな選手が記者会見を開いて発表をすることへの抵抗がありました。最終戦のあと、『来年も頑張って』と言ってくれたファンの方々に申し訳ないという気持ちもありましたし、できればひっそりとやめられないかなと。そんなことをモヤモヤ考えていたら体重が数キロ落ちてしまって。でも会見で自分の気持ちを伝えることができてよかったです。今はスッキリした気持ちですし、ビーチバレーを大好きなまま引退できて、本当によかったと思っています」
浅尾美和ほど人気・知名度と競技成績のギャップが激しいアスリートはいないだろう。8年間の競技生活で、デビュー時から目標としていたオリンピック出場はおろか、ツアー優勝もゼロ(ツアー以外の大会では2回優勝)。自身で「私みたいな選手」と言いたくなるのも無理はない。