プレミアリーグの時間BACK NUMBER
吉田麻也のレギュラー争いにも激震!?
サウサンプトン監督電撃交代の内実。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/01/30 10:31
1月21日の第23節ホームでのエバートン戦、87分に交代したパンチョン(左)と握手を交わすポチェッティーノ新監督。試合後、監督の意向で急遽、チームはバルセロナに渡り短期合宿を行ない、リーグ再開に備えた。
今のところ、新監督を見守っているサポーターたち。
また、前監督下で立ち直りの兆しを見せたサウサンプトンには、強力な「12人目」の加勢があった。
サポーターは、クラブを4部降格の淵からプレミア15位まで引き上げた前監督に絶対的な信頼を寄せ、自軍が追う展開の試合でも、アドキンスを讃えるチャントを合唱しながら、チームを後押しした。その点、新監督は、彼らにとって未知の存在に等しい。
アルゼンチン代表時代を覚えているファンがいたとしても、それは、2002年日韓W杯で、イングランドにPKを与えてくれた相手CBという程度の記憶だろう。札幌ドームでのグループリーグ戦で、マイケル・オーウェンがファウルを誘い、デイビッド・ベッカムがゴールに突き刺した、決勝のPKだ。
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もっとも、結果的には、この「白紙」に近い印象がポチェッティーノには幸いしたと言える。
初采配を振るった第23節エバートン戦(0-0)、ホームの観衆は、新監督を大歓迎することがなかった代わり、試合前に心配された猛抗議を行うこともなかった。
従来通り、スタンドの声援に背中を押されたサウサンプトンは、相手GKの奮闘がなければ、攻勢を続けた前半で勝負を決めることができただろう。エバートンが息を吹き返した後半も、4バックの中では一番の出来を見せた吉田を中心に要所を凌ぎ、連続無敗を6試合とした。
ノルウェー代表DFフォレンは吉田の強力なライバルになる。
就任3日後の試合では、「ポチェッティーノ色」を確認することはできなかったが、チーム得点王のランバートと、チャンスメイカーのガストン・ラミレスを、前節でのベンチスタートからスタメンに戻した起用は、ポジティブに受け取れる。
特に、ここまで、リーグ戦16試合で3ゴール3アシストと物足りない、ウルグアイ人新戦力のラミレスは、英語が片言の新監督でも、同じスペイン語で会話ができることもあり、より効果的な動きによる貢献度アップが期待される。
チームの弱点は守備力であり続けるが、最終ラインには、監督交代と同時にベガール・フォレンが加わった。
就任当日の獲得発表ではあるが、サウサンプトンのサッカーを「数週間に渡って予習していた」というポチェッティーノは、リバプールとエバートンも興味を示していたこのノルウェー代表DFの獲得にも、意見を求められていたに違いない。
ロンドンに住むノルウェー人記者の話によれば、フォレンは「足下に自信を持つ、攻撃意欲の旺盛なCB」。
古巣モルデの監督で、FWだった現役時代に「ベビーフェイスの暗殺者」と呼ばれたオレ・グンナー・スールシャールは、「マンUでも通用する」とまで太鼓判を押している。
膝を痛めているジョゼ・フォンテの欠場が続く2月後半までは、フィジカル過多なヨス・ホーイフェルトに代わって、吉田の相棒となる線が濃厚だが、その後は、持ち味の似ている吉田にとって強力なライバルとなる。
プレミアでも力負けはしなくなり、機動力は申し分ない日本人CBとしては、課題と思われる集中力の持続に努めて、レギュラーでコンビを結成したいところだ。