野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
“横浜捕手暗黒時代”最後の希望、
高城俊人が谷繁に教えを請う日々。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS
posted2013/01/18 10:30
谷繁と並んで黙々とキャッチボールをこなす高城。谷繁の自主トレは、自宅のある神奈川県で行われており、その門戸を多くの選手達に開いているという。
負け続けるチームに勝利をもたらす希望の星が現れた!
ありとあらゆる災厄が降りかかった後。そして、最後には高城が残された。
高城俊人。
'11年のドラフト2位で九州国際大学付属高校から入団した昨年の新人捕手は、高校時代に名将・若生監督に「俺の高校野球人生の中で高城が最高のキャプテン」と言わしめたリーダーシップを持ち、中畑監督をして「あんな強肩見たことがない」と言わしめた希望の星。
その球歴を辿れば、小学生時代にJr.ホークスで優勝。中学時代はシニアで世界制覇。高校では3年時に甲子園春夏連続出場しセンバツでは8打数連続安打を放ったほか、福岡県内では練習試合を含め一度しか負けたことがないという勝ち運の持ち主。そんな勝ち続けてきた男が日本で最も負け続けているプロ野球チームから指名を受け、相思相愛で入団したことは何の因果か運命か。
「谷繁さんは僕の憧れであり、理想とする捕手そのもの」
昨年7月18日のヤクルト戦で谷繁以来、23年ぶりとなる高校新人でのスタメンマスクを任されると、シーズン終了まで積極的にスタメンに起用。19歳とは思えない堂々とした立居振る舞い、ピンチの場面でも自然と間を取れる視野の広さなど、日を追うごとに評価が高まっていく高城に掛けられる期待。そこにはベイスターズ転落の原因でもある喪失した“谷繁”の再来という思いが加味されている気がする。
何より高城自身が谷繁に強い憧れを抱いているということが周囲に期待を抱かせた。
「谷繁さんは僕の憧れであり、僕が理想とする勝てる捕手そのものの姿なんです。昨シーズン、ナゴヤドームでドラゴンズのピッチャーが全然ストライクが入らない時があったんですけど、谷繁さんがタイム掛けてマウンドに行くと、その後バシバシストライクが来るようになりました。言葉ひとつでピッチャーを生き返らせることができるって凄いですよね。純粋にカッコいいですし、僕もそういうキャッチャーになりたいと強く思いました」
シーズン序盤には高木コーチを通じて谷繁のミットを手に入れた。その一挙手一投足に熱視線を送るなど、高城は谷繁の姿を追い続けた。一方の谷繁も高卒でマスクを被る高城のことを23年前の自分と重ねて見ているらしく、ベイスターズの高浦コーチを通じて「聞きたいことがあればいつでも来い」と伝えた。シーズン終盤に谷繁の下を訪れた高城は、試合前のベンチ裏で「今のお前は自分の実力で試合に出ているんじゃない。チーム状況から試合に出させて貰っているんだ。そのことを忘れずに頑張れよ」という言葉を貰ったという。