フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
世界一過酷な国内選手権を越え……。
注目続く日本フィギュア陣の後半戦。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/30 08:02
羽生と高橋の全日本での対決は、日本フィギュア史に残る屈指の名勝負となった。世界の頂点を競うレベルの選手が同時期に国内に2人もいるというのは、まさに奇跡。
札幌市真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開催された2012年全日本選手権も、12月23日無事に終了。今シーズンの前半がこれで一段落した。
それにしても、なんと凄まじい戦いだったことか。
SPでは18歳になったばかりの羽生結弦が、史上最高スコアを出した。2週間前にソチで食あたりのような症状に陥ったという彼は、まだ顔色も青ざめたままリンクに立った。それでも完璧な4回転トウループ、得意の3アクセルなど最後まで勢い良く演じきって97.68を叩き出した。羽生は今季このSPで、スケートアメリカ、そしてNHK杯で次々と世界最高スコアを更新させてきた。
「やはりSPの強さは彼の最大の武器と言ってよいほど安定していたし、羽生の魅力を最大に引き出した選曲と振付だったと思います」
男子のレフリーを務めた岡部由起子氏は、こう感想を述べた。もっとも全日本選手権の採点はISU(国際スケート連盟)の公式記録には残らないものの、世界中のスケート関係者に向けて強烈なメッセージを発信した。フリーでは2位だったが、SPの点差で逃げ切って初の全日本タイトルを手にした。
高橋大輔は気迫の演技で猛追したが逆転には至らず。
一方SP2位から逆転を狙っていた高橋大輔の見せたフリーは、会場全体を圧するような気迫に満ちていた。
2度の4回転を着氷し、2つ目はわずかに回転不足となったものの、GPファイナルでは不調だった3アクセルも、ここでは2回とも完璧に成功させた。表現などを評価する5コンポーネンツではすべて9点台後半をマーク。10点満点を出したジャッジもいた。フリーでは5ポイント近く羽生を上回ったが、SPでの点差を挽回するまでには至らず、2位に甘んじた。
だが王座交代、という言葉を使うのはまだ早い。
高橋は2週間前に、今シーズン前半でもっとも重要な大会、GPファイナルという大舞台でタイトルを取って王者の底力を見せている。そしてこの全日本のフリーでは鳥肌が立つほどの名演技を演じた。