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全日本選手権からソチが見えた!
今季全勝の浅田真央が進む道。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/26 10:30
全日本選手権優勝直後のインタビューで「まだ全然です。完ぺきに(3回転-3回転やトリプルアクセルをやっていた頃の)自分に戻っていないので」とコメントした浅田。
それぞれに、自分自身と向き合っているかのようだった。
フィギュアスケートの全日本選手権、女子は男子に1日遅れて、12月22日にショートプログラム、23日にフリーが行なわれた。世界選手権の日本代表3枠をかけた最後の大会。
優勝したのは、浅田真央だった。
ショートプログラムでは3回転ループが1回転となるミスがあり、鈴木明子に遅れを取って2位。フリーでもジャンプにミスはあったものの、130.75点で1位、トータルでは193.56点と逆転、全日本選手権6度目の優勝を飾った。
しかし、浅田に笑顔はなかった。
浅田は今大会、このような目標で臨んでいたという。
「すべてをクリーンに滑る」
だが、ミスがいくつか出た。目標を達成できなかったことが、喜べない理由だった。
納得いかない優勝では自信につながらないと言う浅田真央。
今シーズンの浅田は、グランプリシリーズの2大会、グランプリファイナル、そして全日本と、すべて優勝している。
成績を見れば、これまでと比べても、上々のシーズンを過ごしてきたと言える。その点を尋ねられても、こう答えた。
「優勝は、頑張ってきてよかったなと思うんですけど、でも自信にはならないです。今回の演技の出来は、自分が1番よく分かっています」
そこにうかがえるのは、国内外の他の選手の誰がどうこうというのではなく、自分の納得のいく演技をしたいという思いだ。
浅田はさらにこう語った。
「自分は3回転-3回転やトリプルアクセルをやっていた時期があり、それが試合でできたときにようやく喜びを得られると思うので、今は納得してはいないです」
何よりも、理想と思い描く演技がある。そのためにも、できることをひとつひとつ積み上げていくことの重要性を理解しているからこその自己評価であり、自身へのシビアな言葉が続いたのだ。
ただ、演技構成点が象徴するように、スケーティングなど、進化は着実に示してきた。今シーズンのテーマとして掲げてきたのは「向上」。さらなるレベルアップのために、理想の演技に到達するために、自分と向き合うという、他者との競い合いよりも困難な作業を続けていくことになる。全日本選手権は、その一つになった。