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「一本を取る」見栄えのする柔道へ。
新ルールに日本は対応できるか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byDaiki Kitamura/AFLO
posted2012/12/16 08:01
12月2日まで行なわれたグランドスラム東京、60kg級決勝で肩車を決め、優勝した高藤直寿。今回のルール変更で決まり手が禁止となり、戦い方のモデルチェンジを迫られる選手も多い。
国際柔道連盟は「美しくてスペクタクルな柔道」を志向。
11月末から行なわれたグランドスラム東京の際、来日した国際柔道連盟のビゼール会長は、すでにルール変更を示唆していた。
「伝統も重要ですが、時代は変化していっています。嘉納治五郎氏が時代に合わせて柔道を育てたように、時代に合わせ、柔道を発展させていかなくてはいけません」
また、こうも語っていた。
「一本が究極の目標である、美しくてスペクタクルな柔道を提示していかなければなりません」
ルールの変更を見ても、一本を取る柔道をより志向するという意図が込められているように受け取れる。
根底には、柔道の、広い意味での発展を目指す強い意志がある。
以前から国際柔道連盟は、柔道の地位をよりメジャーにしようとしてきた。ビジネスの機会を広げる狙いもある。そのために、ランキング制度の実施や、国際大会の格付けの整理を行ない、世界選手権の毎年の開催などを取り入れてきたし、オリンピックでの団体戦の採用も目指している。
こう着状態が少ない、エキサイティングな柔道をめざす。
一方で、柔道の普及に伴い競技として成熟するにつれ、拮抗した試合が増えもした。駆け引きも進化している。
だからか、ロンドン五輪では、ふだんはあまり柔道を見ない人々から、「試合が面白くなくなった」という声も少なからずあった。
競技のレベルが上がれば、容易に投げが決まらないのはやむを得ない面である。国内での試合も同様だ。それを「拮抗」と取るか、「停滞」と取るか、それは見る人の視線による。
ビゼール会長も、ロンドン五輪を振り返ってこう語った。
「ロンドン五輪は成功でした。一方でストレスもあった」
そして五輪後、討議を重ねてきた結果が今回の変更である。「より見栄えのする柔道」を、ということである。