フットボール“新語録”BACK NUMBER
若きサムライがロシアU-18代表に。
Sモスクワ・篠塚一平、17歳の夢。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/13 10:31
取材を行なったロシア料理レストランにて。スパルタク・モスクワのシャツを着ていたため、レストランの店員に「スパルタクの選手なのか?」と声を掛けられていたが、動ぜずロシア語で会話をしていた。
将来のロシア代表候補を上回ってベストMFに選出。
「いつもトップ下でプレーしているんですが、この大会ではリザーブチームに昇格していたデニス・ダビドフという選手がユースに戻って来たので、僕はボランチで出場することになった。シンプルにボールをさばくことに加えて、どんどんドリブルを仕掛けようと思った。それでPKを2回奪って、さらに3位決定戦で2アシストした。監督はあまり褒めるタイプじゃないんですが、珍しく『良かったぞ』と言ってくれた。表彰式では『来るかな』と思っていたら、ベストMFで名前を呼ばれた。嬉しかったですね」
ダビドフは、篠塚にとって身近なライバルである。
所属する代理人事務所も同じで、ポジションも同じトップ下。ダビドフはロシアのアンダー年代の常連で、将来A代表で活躍することが期待されている。そのダビドフを上回ってベストMFに選ばれたことは、篠塚にとって大きな自信になった。最近はリザーブチームの練習にも呼ばれており、いよいよ正式な昇格が近づいて来た。
日本代表のユニフォームを着るという夢は少しも変わってない。
1月の国際大会にはイタリア(2012年大会王者)、チェコ、トルコなどが出場し、ロシアはギリシア、スロベニア、ラトビアと同組に入った。
「まだ実感はないんですけどね。ロシア代表のユニフォームに袖を通したとき、実感が湧くんじゃないかな」
篠塚はロシアには珍しいネイマールのようなブラジルを連想させるドリブラーで、これからロシアU-18、U-19とステップアップしていくに違いない。
ただし、将来は日本代表のユニフォームを着るという夢は少しも変わってない。
「日本代表でやりたいという気持ちは変わってません。ただ、そのためには選ばれるような選手にならなければいけない。父親とは『日本の高校を中退したから、絶対にロシアの高校を卒業する』と約束している。サッカーも、勉強も、全力でやっていきますよ」
FIFAのルールでは、A代表の公式戦に出るまでは国籍変更が可能で、アンダー年代のロシア代表でプレーしても、のちに日本代表になることができる。モスクワで挑戦を続ける17歳は、日本サッカー協会にとっても目が離せない選手になろうとしている。