南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
デンマーク戦を越え決勝Tへ進むには、
元祖“W杯男”稲本潤一が必要だ!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/06/22 10:30
「圭佑に、おいしいところを持っていかれたね」
日本国外でのW杯初勝利に気持ちが高揚する風でもなく、淡々と話を続ける。過去、大きな歴史を作ってきた男は、1勝にも浮かれることはない。
――同じ金髪にゴールを奪われた。
「圭佑に、おいしいところを持っていかれたね。あいつは、持っているよ」
8年前、ロシア戦で決勝ゴールを決めた時、「イナは持っているなぁ」と、小野伸二らに羨ましがられたことを思い出す。主役の座は、時を経て同じ金髪の龍が如き勢いのある若者にバトンタッチされた。
――ところで、伸二らに連絡した?
「いや、してへんよ。まだまだ、先があるしね。まぁここまで、イイ感じで来ているけど、オランダ戦、デンマーク戦は甘くない。特に最後のデンマークとの決戦で、どんだけ力を出せるかってことが重要になってくる。最後がほんまの勝負っすよ。その時、少しでも出られるように、コンディションだけはしっかり整えていきたい」
稲本の言う通り、オランダには敗れたが、グループリーグの最終戦デンマーク戦は雌雄を決する戦いになった。阿部らスタメン組の選手は好調で、岡田監督もスタメンを変えにくい状況ではある。だが、そういう大一番、修羅場の戦いでこそ3大会出場した稲本のような経験者のプレーが生きてくる。
「まぁ出たらやるだけですよ」
いつもの言葉を繰り返した。
2試合での出場時間は、わずか6分。だが、デンマーク戦でチームを勝利に導き、主役の座を取り戻すことを、稲本は、まだ諦めていない。