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デンマーク代表のサッカーに隙アリ!!
“北欧の生真面目軍団”の弱点とは?
text by
西部謙司Kenji Nishibe
photograph byGetty Images
posted2010/06/21 11:20
写真左は“デンマークの王様”ヨンダール・トマソン、右はアーセナルで活躍する長身フォワードの二クラス・ベントナ―。このベテランと若手の2人がゲームの主導権を握る
デンマークのサッカーは極端に理路整然としている。
これは北欧の代表チーム全体に共通する特徴でもある。
冬の厳しい気候の中で生きてきた彼らには、日常生活のどこを見てもラテン的ないい加減さや楽天性は見られない。非常に理詰めで……つまり、デンマークのサッカーは彼らの作る重厚で緻密な家具のようにキッチリとしている。ちなみに家具や建物の四隅がぴしゃりと寸分の狂いなく収まるというのは当たり前のようだが、北欧や日本以外では案外そうでもないものだ。
日本を上回る組織力と融通のきかなさが特徴。
今回のデンマークも組織のチームだ。
攻撃も守備も組織。派手さはないが堅実そのもの。日本にとっては本来、非常に戦いにくい相手だと思う。日本も組織のチームだが、その点ではデンマークのほうが上手だからだ。しかし、今回は日本に大きなチャンスがある。
なぜなら、日本はデンマークに引き分けさえすればグループリーグを突破できるからだ。
もし、日本が勝たなければいけない条件だったら、この勝負はデンマークが相当に有利だった。しかし、わずか1ゴールだが日本は優位に立っている。引き分けでいいのと、勝たなければいけないのとでは雲泥の差といえる。
日本が引き分けを狙えるという意味ではない。
デンマークにとって勝利しか許されない状況が厳しいのだ。
理詰めできっちりしているデンマークのサッカーは無理が利きにくい。彼らは理屈に外れた動き、発想、無謀なプレーをしない。苦手なのだ。おそらく国民性なのだろうが、そういうことができない。
例えば、デンマークの選手でドリブルで仕掛けていくのはほぼ右ウイングのロンメダールだけ。あとは徹底的にパス、チームプレーで攻撃する。あるいは守備。ゾーンの規則的な守備ブロックを作り、チャレンジ&カバーの忠実な動きを絶え間なく続けていく。常にポジショニングは整然としていて、無理にボールを奪いにいくこともない。
W杯に3回出場して3大会ともベスト16を外したことが無い。
徹底した組織サッカーのデンマークは、これまで3大会に出場してベスト16を外したことがない。
強い相手にも気後れしないし、弱い相手にも油断しない。淡々と自分たちのサッカーをやり切ってしまう。だから、本来ならば日本にとっても厄介な相手になるはずなのだが、今回のデンマークは日本に勝たなければならないという至上命題がある。
点をとりにいかなければならない。場合によっては、相当に無理なプレーをしなければならない。無理の利かない体質のデンマークにとって、これはかなり負担になるに違いない。だから日本には大いにチャンスがあるというわけだ。