南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
驚くべき本田圭佑の戦術適応能力。
3週間で掴んだエースの座。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2010/06/15 11:40
本田は超守備的なシステムにわずか3週間で適応した!!
冷静なシュートの背景には精神面の安定もあった。
「ここ2日間ほど“楽しんでプレーしよう”とメンタルコントロールしていた。何ごとも死ぬ気でやれば、いい結果が出るということを証明できた」というのだ。
頭の中を整理した状態に持っていけたのは、チーム戦術と、普段から口にしている自分の良さを出すという部分の折り合いをつけていたからだ。
「オレはストライカーじゃないし、ストライカー的なことをやってもしょうがない。初心に帰って、自分にできることをやって、相手の嫌なことをしようと思った。中盤に下がってボールを受けたりもした。本来の自分のプレーをやった結果のゴールだった」
5月24日、ホーム埼玉スタジアムで行われた壮行試合・韓国戦での惨敗。その試合をきっかけに岡田監督が採用した超守備的なシステムへの戦術変更に対し、わずか3週間という短い期間で見事に適応していた。
“不屈のライオン”を相手に、弱小日本がアフリカの地で1-0の無失点勝利を収めた。あの自分の良さを出すことにばかり頭が向かっていた本田が「日本の強みは団結力」と胸を張った。いずれも驚きである。
決してビューティフルな勝利ではないことは誰もが分かっている。
だが、泥臭さまでもが心地よい、勝ち点3。日本が6戦未勝利だった国外開催のワールドカップで歴史的1勝を収めた。