日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
酷暑のマスカットでオマーンを撃破!
交代策にザックが込めたメッセージ。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/11/15 12:10
左足親指の骨折でフランス、ブラジル戦を自宅で観戦していた岡崎が、完全復活を告げる値千金の決勝ゴール。「自分たちのサッカーを貫いて、最後に決められて本当に良かった」とコメントした。
ザッケローニらしいバランスのとれた攻守の切り替え。
この交代の意図を、ピッチ上の選手たちも理解していた。
「まずは守備をしっかりしていこうと」(長谷部)、「サイドハーフに入ったからには絶対に点に絡むという強い気持ちでやっていた」(長友)とバランスを重んじるザッケローニらしく攻守のメッセージがあった。リスクマネジメントの意識を高めつつ、点を奪えるチャンスをうかがえ、と。
指揮官も会見で「長友と酒井高徳のコンビネーションでうまく打開できるのではないかと思った」と守備重視の交代策ではないことを強調している。
FKで同点に追いつかれてからは、清武に代えて細貝萌をボランチに投入。これによって遠藤がトップ下に上がるという布陣になった。これもザッケローニらしい手堅い策ではあるのだが、何も1-1で終われというメッセージではない。
「(監督には)真ん中に残ってくれと言われましたし、まずは守備で引き締めることだけを考えて入った」
細貝はスペースを埋めながらボールを奪い取る役目を担い、そこからフリーになっている2枚のセンターバックにパスを供給してから、もう一度流れを引き込もうとした。
勝因は「最後まで(自分たちを)信じ切ったことだ」。
後半も半ばを過ぎると、全体的に動きは今ひとつも、気温は下がり、ピッチでも日陰が増えてきていた。ずっと走らされていたオマーンも、すっかり疲弊しているようだった。
そして最後のゴールシーンを迎えるわけである。中盤の構成力を高めながら、相手の弱いサイドを突いて岡崎の決勝点は生まれた。
オマーンは今予選、ホームで一度も負けていない。しかしザッケローニは2日前、欧州組もそろって全員を集めたミーティングで、このようにハッパをかけたという。「オマーンとの一戦に勝てなければ、W杯に行けないというぐらいの気持ちで戦ってくれ」と――。
つまり1-1という状況かつアウェー感漂う終盤の時間帯ではあったものの、彼らは冷静さを保ちながらも1点を奪って必ず勝つという熱さを共有していたのだ。
勝因を聞かれたザッケローニは「最後まで(自分たちを)信じ切ったことだ」と満足そうに言い切った。