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外国人選手獲得は今が絶好の時機!?
なでしこリーグ、群雄割拠化のススメ。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAsami Enomoto
posted2012/11/28 10:30
110分間に及んだリヨンとの死闘に1-2で敗れ、世界一を逃したINAC。試合後、星川監督は、「いつもと違うサイズ、スピードに戸惑った部分があった」と敗因を話した。
新設された、サッカーの国際女子クラブ選手権(IWCC)。
欧州女子チャンピオンズリーグを制したオリンピック・リヨン(フランス)、オーストラリアWリーグ覇者のキャンベラ・ユナイテッド、そしてなでしこリーグチャンピオンであるINAC神戸レオネッサと、なでしこリーグカップ優勝チームの日テレ・ベレーザの4チームで争われた大会は、11月25日(日)にNACK5スタジアム大宮で決勝戦が行われ、リヨンの優勝で幕を閉じた。
決勝戦はリヨン対INAC神戸という顔合わせ。両者ともそれぞれの持ち味を存分に発揮し、女子サッカーの最高峰と呼ぶに相応しい一戦となった。
特筆すべきはこの試合でINACの選手たちが披露した抜群のパフォーマンスで、なでしこリーグ戦でのそれとは別次元と言えるプレーの数々は、見る者を何度もうならせたのである。
ここに、日本の女子サッカー活性化への壁とヒントが隠されているような気がしてならないのだ。
欧州女王の名に恥じないアタックでINACをねじ伏せたリヨン。
リヨンは11月に入ってからすでに7試合を消化していた上に、日本への長時間移動や時差、大会初戦から中2日というスケジュールなど、タフな条件下で決勝を迎えた。
そこで彼女たちは前半、攻撃をセーブしてスタミナを温存し、後半から体格やスピードの差を生かして一気に勝負に出た。とはいえ、ロングボールばかりに頼った大味なスタイルではない。細やかな構成とダイナミックな展開を織り交ぜた、欧州女王の名に恥じないアタックを見せ、最終的に日本のリーグチャンピオンをねじ伏せたのだ。
「男子のバルセロナに匹敵するINACに勝てたことは誇り」
にもかかわらず、延長までもつれ込んだ試合後の会見でリヨンのレール監督が繰り返し口にしたのは、敗れたINACへの賛辞だった。
「私は3年前にリヨンの監督に就任したが、INACほど素晴らしい対戦相手に出会ったのは初めてです。ヨーロッパといえども女子の世界はパワーサッカーが主体で、あそこまでパスを回せるチームは存在しません。私に言わせれば、INACは男子のバルセロナにも匹敵すると思う。そんな相手に勝てたことは誇りです」
そして、優勝を決めた瞬間のリヨン選手のはしゃぎっぷりは通り一遍なものではなく、まさに各人が全身で喜びを表現していた。選手たちが試合を通してINACの強さを肌で実感し、そんな相手を倒せたからこそ、うれしさを素直に爆発させたのだろう。それを裏付けるように、リヨン唯一の日本人選手である大滝麻未は試合後、
「チームメイトがあそこまで真剣にプレーする姿を、今日初めて見ました」
と語っていた。
それほどINAC選手のボールコントロール、視野、パスサポートに入るアングルの的確さ、パスコースやプレー(はたくのか、キープするのか)を瞬時に選択する判断力は、目を見張るものがあった。リヨン選手の顔色が変わったのも無理はない。
しかし、敗軍の将である星川敬監督に満足感はなかった。
「我々は、国内ではどんな相手でもいなしていける技術があります。今日の試合でも前半は、自分たちの武器であるパスサッカーが通じた。しかし後半に入ってプレッシャーをかけられた時に、精神的な弱さが出て持ち味を出せなくなってしまった。負けは順当な結果です」