「見極め」「指名」から「見守る」まで。
プロ野球スカウトの役割を再考する。 

「どこかの球団で、プレーできたらいいんだけど……」

「安藤（優也）とは年数が経ちますが、今でも何かある時は連絡を取ります。復活の勝利を挙げた時には、一声かけました。

　能見（篤史）はエースになってくれましたけど、インコースの使い方が良くなりましたよね。昔から能見はインコースには投げていたんですけど、ボールになっていた。あれが少し、ストライクゾーンに投げられるようになって、成績が付いてきたんじゃないかなぁ。実際はどういう評価をされているのかは分かりませんけど、僕が見る限りはそう見えるんですよ」

　そんな池之上スカウトだが、今季限りで戦力外通告を受けた'08年ドラフト1位の蕭一傑の担当スカウトでもあった。

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「（蕭は）戦力外になってからも鳴尾浜で練習していてね。いろんな話を聞いていると藪恵壹コーチともう1年やってくれていたらなっていう想いもするんだけどね。ただ、藪コーチは『蕭は良くなってますよ』と言われて。どこかの球団で、プレーできたらいいんだけど……」

日常の礼儀作法から、プロの心構えまでを伝えるスカウトがいる。

　選手に特に厳しいスカウトとして浮かぶのは中日の米村明だろう。

　直接会った時の挨拶はもちろん、電話のコールバックなどでも選手に対し厳しい声を掛ける。米村スカウトが担当している選手の、取材者への振る舞いが良いのは、おそらく、彼の日常生活での指導の賜物なのだろうな、と感じる時まである。担任の先生というよりも、怖い父親に近い存在なのかもしれない。

　米村スカウトがこんな話をしていたことがあった。

「（礼儀の面に関しては）よく言ってるから、心配はしていない。それ以外の話では……（'10年2位で指名した）吉川大幾が試合中に指を怪我して、遠征を離れたことがあった。すぐに電話したね。『お前には足がないんか。なんで、代走でもいいから出ますって言わんかったんや』とね。

　吉川は高校の後輩でもあるから厳しくいうところはある。『PLの先輩でファームでくすぶっとる選手がおるか？　みんなが活躍しているのは、そういう部分がしっかりしているからや。それがPL魂や』と。厳しく言ってしまうけど、でも、吉川は絶対、俺と会っても嫌な顔をしないし、真剣に話を聞いてくる。かわいいヤツでもあるし、なんとか成功してほしい。吉川にはこうも言っている。『お前は井端弘和が引退してからレギュラーになっているようじゃ、野球選手としてはそれほどの選手になれない。井端からレギュラーを獲るくらいじゃないとアカンぞ』とね」

【次ページ】　大野雄大の活躍に垣間見えた、米村スカウトの存在。