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日本人は大谷翔平をまだ知らない!?
“国民的スター選手”になる条件。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/10/24 12:20
10月21日、メジャー行きの決定を清々しい表情で表明した大谷翔平。その健やかな大志こそ、最優先で保障されるべきものである。
日本人は知らないのに、米国では有名な選手になる!?
無論、“国民的スター”の誕生を願うなど、いかにも了見が狭いし、もはや時代遅れと言われればそうなのかもしれない。大谷は、「時代が違う」という、ただその理由だけで野茂やイチローや松井らのような国民的スターにはなれないのかもしれない。
しかし、このまますぐにアメリカへ渡れば、彼らを越える存在、世界的なスターになれる可能性もあるのだ。
日本人には馴染みはないが、アメリカでは、世界では、もっとも有名な日本人プレーヤー……そういう選手が出てきてもいい。大谷には、その才能がある。
ただ、こうも思った。花巻東サイドの今回の判断の裏には、菊池が、日本球界で伸び悩んでいるという現状もあるのではないか、と。もっといえば、不信感である。
だとしたならば……日本ハムなら、内心、ありではないかと思っていた。
主力選手が抜けても、次々と新しい戦力が出てくることからも、その育成力はもはや折り紙付きだ。その評判は、高校球界まで届いている。
しかもダルビッシュは、昨年、わずか7年で日本球界を去った。条件さえ整えば、6年目を終えた時点で渡米していた可能性もあったようだ。
日本ハムほどメジャー挑戦に協力的で理解の深い球団は他にない。
育成力に定評があるにもかかわらず、日本ハムほど移籍に寛容な球団はない。
日本ハムの大渕隆スカウトディレクターが、斎藤佑樹がまだ大学生だった頃に知人を介して、国際的な野球人だったアイク生原の生涯を描いた『ドジャースと結婚した男』という本をプレゼントしたことがある。当時、大渕は話していたものだ。
「斎藤がアメリカ遠征から帰ってきたとき、表情がまったく違っていた。キラキラしていた。あーメジャーに夢が見えたんだな、って思った。それはまったく悪いことじゃない。どうぞ、って。だから、いち野球人として、昔、アメリカ野球に夢をみたアイク生原さんっていう人がいたということを知っておいてもいいのかなと思ったんです」
もちろん、ダルビッシュ級の有望選手を引き留めるには、それなりの資金力が必要であり、そうしたお金をかけるやり方は球団方針にそぐわないという現実的な理由もある。それにせよ、これほどまでにメジャー挑戦に協力的というか、理解の深い球団は他にないだろう。
だから、あるいは日本ハムなら、大谷をくどけるのではないかとずっと思っていたのだ。