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今季公式戦に全試合連続出場中!
なぜ長友はインテルで重用される?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/09/28 11:45
シエナ戦の敗北時、『ガゼッタ』紙は「その献身的プレーは満点に値する。すべてのボールに対して人生を懸けたかのようにアタックしていった長友」と掲載。ただし、本拠地サン・シーロで勝てないという結果に対して、厳しい評価を与えていた。
疲労困憊なのに……闘志溢れるプレーを続ける長友。
新布陣では、外の長友と内のサネッティが組む右の中盤ユニットに対し、左にはペレイラとグアリンというFCポルト出身コンビが並んだ。
ただし、練習不足は顕著で左右ユニットはバラバラ。
前線と3バックとの連係もまるでこなれておらずプレーは分断されたまま。キエーボにいいように攻められる場面もあり、キエーボ戦のインテルが観る者を楽しませたとはお世辞にも言い難い。
だが、長友は勝負どころを逃さなかった。
前半終了間際の43分、サネッティからパスを受けると右サイドからゴールエリアを急襲。ファーサイドめがけて放った高速クロスをペレイラが押し込み、見事に先制点をお膳立てした。キエーボDFに当たったものの明確な意思をもって得点機に絡んだ長友には、イタリア現地メディアがアシストをつけるべきだと言を同じくした。
後半22分、第4審判の掲げるボードに“55”の文字が赤く点灯した。疲労困憊の表情で長友はゆっくりとベンチに下がる。その後、カッサーノが追加点を決め、2対0で勝利を収めるとインテルは4位に浮上。
長友は今季初めて、タイムアップの笛をベンチで聞いた。
「サネッティと長友だけは交代させるわけにはいかない」
今季、長友はDF登録メンバーとして、チームで唯一、公式戦の全試合出場を続けている。
セリエAとELの過密日程を乗り切るために、指揮官はターンオーバーを多用することを明言。他の全試合出場選手は、攻守の要であるカンビアッソとグアリンのMFコンビのみ。「サネッティと長友だけは交代させるわけにはいかない」とは、ルビン・カザン戦後のストラマッチョーニの賛辞だ。7日間の3連戦をすべて異なるポジションで乗り切った今、長友にとっては何よりの労いの言葉だろう。