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宮市亮、ウィガンでの修行は順調か?
“ウィングバック”でさらなる成長を!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2012/09/24 12:30
第5節のフルアム戦、2点を追う展開で投入された宮市。再三にわたり右サイドを突破したが、クロスの精度を欠き、決定的なチャンスを演出することはできなかった。
アーセナルの宮市亮が、ウィガンへのレンタル修行に出て1カ月以上が過ぎた。その間に経験したプレミアリーグのピッチは、2度の途中出場による約25分間にとどまっている。
9月22日、第5節フルアム戦(1-2)での出番は、前回よりも3分早い、76分に訪れた。チームは2点のビハインド。ロベルト・マルティネス監督は、エマーソン・ボイスとギャリー・コールドウェルという、30代のDF2名に代えて、19歳の宮市と、21歳のFWカラム・マクマナマンを投入した。ホームゲームでの終盤、若いエネルギーを加えて総攻撃を狙ったのだ。
後半ロスタイムに、アルーナ・コネが返した1点は、マクマナマンによるシュートのリバウンドから生まれた。だが、そのチャンス自体は、右サイドに張った宮市が、ファーポスト側に送ったクロスからのCKが導いたものだ。直接的に得点には絡めなかったものの、宮市は、退いてリードを守るフルアムに対し、前線の活性化を求めた指揮官の意図に沿ったプレーを見せたと言える。ベンチを出て2分足らずでクロスを狙い、その後も、右サイドをえぐって立て続けにCKを奪った。
移籍後初ゴールは、GKシュウォーツァーに惜しくも阻まれる。
得点に最も近づいたのは80分。振り切った相手は、守備に回っていたFWのウーゴ・ロダジェガだったが、1対1から縦に抜けると、角度の厳しい位置からファーポスト目掛けてクロスを放った。すると、ボールはそのままゴール上段に吸い込まれるかと思われたが、身長195センチのGK、マーク・シュウォーツァーの長いリーチが、宮市の移籍後初ゴールを阻んだ。
宮市は、ウィガンでのリーグ戦デビューでも、限られた出場時間の中でゴールに迫っている。FWとして投入された第3節ストーク戦、スルーパスに反応して走り込んだが、すんでのところでCBの捨て身のタックルに遭い、シュートを未然に防がれてしまったのだった。
当人は、記念すべきホームデビュー・ゴールの芽を摘まれても、クラブの公式サイト向けのインタビューで、「ベリー・ハッピー、ベリー・グッド・エクスペリエンス」と、発音もしっかりした英語で答え、笑顔を見せていた。だが、もっと早く投入されていればと、歯痒く思った日本人は筆者だけではなかっただろう。更に言えば、宮市に関しては、イングランド記者陣の中にも、開幕当初から「先発当確」と見る向きがあった。何故かと言えば、チェルシーとの移籍交渉が進んでいた、ビクトル・モーゼスの穴を埋めるソリューションと理解されていたからだ。