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<W杯連覇なんて出来っこない?> ガットゥーゾの反論。 「俺の答えは、ノープロブレム」
text by
クリスティアーノ・ルイウCristiano Ruiu
photograph byGetty Images
posted2010/06/01 06:00
“猟犬”と呼ばれる男は、今大会も本気で優勝を狙っている。
――リーノ(ガットゥーゾの愛称)、敢えて厳しい質問から始めたいんだが……。
「ノープロブレム。もう俺もベテランだから手厳しい質問や批判には慣れっこだし、十分な免疫を持ってるから大丈夫だよ。何だって聞いてくれ(笑)」
――OK、ではこの問いから。W杯開幕を目前にした今、前回覇者イタリアの評価は決して高くはない。むしろ、それは極めて低いと言うべき状況に置かれているよね。『確かに'06年は世界を制したが、その奇跡を起こせるだけの力を今のイタリアは持っていない。主力は依然として同じ顔触れ。彼らは確実に4つ齢を重ね、一方で若手の台頭はない。したがって戦力は著しく落ちている』と。
「だから連覇なんて出来っこない? なるほどな。まぁ確かにそうした見方にも一理はある。だが俺の答えは、ノープロブレム(笑)。そりゃぁ俺たち'06年組は年をとり、刻まれた傷は日増しに痛みを増しているよ。傷の数自体が試合を重ねる毎に増えてるしな。ファビオ(・カンナバーロ)もジャンルカ(・ザンブロッタ)もジジ(ジャンルイジ・ブッフォン)も同じだし、あのアンドレア(・ピルロ)だってもう31歳になる。で、今シーズンの俺たちはリーグ戦で思うようなプレーをみせることが出来ていないし、特に序盤は長く戦列を離れてた。まぁ、だから代表に対する悲観論が増えてるのは当然かもな。
だがな、ピッチに立てない中で俺たちが萎えてるかって言えば、それは大きな間違いでね、実際は真逆なんだよ。俺たちの腹ん中には“怒り”が満ち溢れてるわけ。というより爆発寸前。使われないストレスでもう死にそうなんだよ(笑)。ピッポ(フィリッポ・インザーギ)も言ってたように、プレーできないと気が狂いそうになる。
要するに、老いてもなお闘志ギンギンなわけ。試合に出れないからってイジけるようなタマじゃないんだ。怪我とか不調とかに萎えるようじゃ、それこそ引退だよ。だが俺たちは違う。シーズンが終盤に差し掛かるに従ってファビオがどれだけ調子を上げているか知ってるだろ? 俺もそう。経験ってやつはダテじゃないのさ。6月14日にトップになるべく、着実に、したたかにコンディションを作ってるんだよ。だからノープロブレム(笑)。まぁ見ていてくれよ」
「ボスの指示に従えば俺たちが道を誤ることはない」
――イタリア代表は5月4日と5日にローマで合宿を行なったけど、'06年と比べてチーム内のムードに変化はあった?
「当時に比べれば静かだよ。何てったって4年前は例の“カルチョカオス(モッジ事件)”の嵐が吹き荒れてたしな。なぜか最近騒ぎがぶり返しているけど、俺たちは至って落ち着いてるよ。さっきも言った通りベテランたちの気合いは凄いし、(代表枠23人の)当落線上にあるヤツらのモチベーションも半端じゃない。俺たちにしても一日一日が勝負だよ。ポジション争いは熾烈だからな。まあ実にいい感じに盛り上がってるよ」
――マルチェロ・リッピは『連覇は不可能ではない』と明言している。
「4年前の優勝はまさしく偉業だったわけで、あれを成し遂げた監督は世界を獲ることの難しさ、その方法を熟知している。ボスの指示に従えば俺たちが道を誤ることはない。そう確信させてくれる存在だよ」
――とはいえ、招集メンバーに関しては、いつも通り批判が少なくない。トニ、トッティ、カッサーノ、バロテッリ……メディアやファンが推す選手の多くが外れている。
「ただでさえ騒々しいイタリアの代表だから、賛否両論あるのは当然だよ。だけどリッピが惑わされることはない。彼が選ぶ23人こそが最強のアズーリなのさ」