杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
なぜ日本代表は前を向けないのか?
欧州の常識との決定的なズレ。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/05/27 10:30
W杯前、国内最後となる韓国戦で日本は0-2と完敗。あとにはイングランド、コートジボワールとの親善試合が控えている
日韓戦の敗北で明白になった日本の根本的な問題点。
ただ、日韓戦に話を戻せば、僕はそれほどひどい出来だとは思っていない。良くやった部類に入る。持てる力を発揮したと思う。
それでも何もできなかった。0-2のスコア以上の差を見せつけられた。日本がありえないミスを連発した結果ではないところに、事の重大性を感じる。
つまり韓国との間には、根本的に著しい開きがあるのだ。サッカーの質において、サッカーゲームの進め方において。
日本はサッカーの捉え方に大きな間違いをしている。そうした確信が僕にはある。
選手の技術の問題、体力の問題。あるいは細部に目は行きがちだ。「パク・チソンはすごい!」だとか「日本の選手はなぜ横パスばかり出すのか」だとか、小さな話で終わらせてしまう傾向があるが、決定的な差は別にある。ピッチの使い方だ。カバーするエリアの概念だ。
韓国とインテルにあって、日本にないものとは?
たとえば、中盤でボールを奪い、カウンターに転じたとする。そのとき、韓国のほうが、明らかにパスコースが多い。
これは守備的なサッカーだと言われたインテルにもあてはまることだ。ボールを奪った瞬間、パスコースは3つある。反転速攻で、スナイデルがボールを持ったとき、パンデフ、ディエゴ・ミリート、エトーの3人がパッと扇形に散る。
韓国もパク・チソンがボールを持ったとき、イ・チョンヨン、イ・グノ(パク・チュヨン)、ヨム・ギフンの3方向にパスコースが開けている。
対する日本は2方向。逆サイドがないのだ。よって、相手のセンターバックが外に引きずり出されることもなく、守備隊形は崩れにくい。
このことは中盤にも言える。「真ん中のゾーンにボールが入らない。組み立てられない」と岡田サンは言うが、それは相手が陣地をそこに寄せてきてスペースを消しているからだ。それを可能にしてしまっているのは、逆サイドに人がいないからである。
日本にサイドチェンジのアイデアが皆無なことも輪をかける。ピッチの使い方が狭いのだ。幅がないから中央のエリアが詰まる。前が向けない理由は簡単だ。