杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
なぜ日本代表は前を向けないのか?
欧州の常識との決定的なズレ。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/05/27 10:30
W杯前、国内最後となる韓国戦で日本は0-2と完敗。あとにはイングランド、コートジボワールとの親善試合が控えている
壮行試合を行なった後、代表監督がサッカー協会会長に進退伺いを出す国──。
岡田ジャパンは、韓国に惨敗後すぐに日本を離れ、欧州へと旅立っていったが、あそこで進退伺いを出す岡田サンは、どういうセンスの持ち主なのか。
もはやこのタイミングでクビを切れないことを承知の上で、進退伺いを出した岡田サン。
それを記者会見の席上で、誰にも聞かれないのにべらべらとしゃべった岡田サン。
挙げ句、「会長の責任問題にもなりますよ」と、逆に犬飼さんに迫った話まで披露するサービス精神を発揮した岡田サン。
彼がサッカー協会に対して腹に一物を持っていることは、この件ではっきりしたが、それを聞かされた選手はどう思うだろうか。選手だって監督に言いたいことは山ほどあるはずだ。それをここまで我慢してやってきたわけだ。自分だけひとりブチ切れるのは、身勝手と言わざるをえない。
はたして犬飼会長には会長職を賭す覚悟があるのか?
なぜ、ここまで引っ張らず、もっと早く進退伺いを出さなかったのか。なぜ、それを会長との内輪話にとどめておけなかったのか。
ファンにとってW杯は、4年間待ち焦がれたビッグイベントだ。その夢を壊すような真似をしていることに気づいているのか。自分は誰のために存在しているのかが、この人にはまったく分かっていない。それで「頑張れニッポン!」と応援してもらいたい気持ちが少しでもあるのなら、かなりの厚かましさだ。
犬飼さんも犬飼さんだ。こうなることは分かりきっていたのに放置してきた責任は重い。この会長には見通す力が極端に不足していると言わざるをえない。
もし日本代表が本大会で惨敗を喫しても、会長職にとどまるつもりなのか。岡田サンの言う通り、責任問題に発展することは間違いないが、その覚悟はできているのか。もしそこで「岡田を選んだのは俺じゃない。前会長だ」とシラを切れば、ファンが暴動を起こしても不思議はない。日本中の多くのサッカー選手だって、サッカー協会に登録料を払う気が失せるだろう。なにより、代表戦を見る人の数が激減するだろう。