黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
日韓戦の敗北にも気持ちはブレない。
遠藤保仁はドイツW杯直前を思い出す。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/05/26 10:30
遠藤にとってのドイツW杯の想い出は他の選手とまったく異なる。遠藤はフィールドプレーヤー(GK以外の選手)で、大会期間中を通して唯一試合に出られなかった選手だからである
5月24日、親善試合の韓国戦、日本は0-2で敗れた。試合後、遠藤保仁は、「悔しいね。なんとか勝っていい形でスイスへの合宿に繋げたかったけどね」と、渋い表情を見せた。だが、自分のプレーについて問われると、こう続けた。
「自分的には、普通かな。細かい課題はあるけど、いい感じで来ている。このまま継続していけば、W杯は問題ないでしょ」
体調不良だとか、プレーにキレが無いなどと雑音にさらされてきた遠藤だったが、なんとなく自分の感触を取り戻せたのだろう。ほんの少し安堵した表情を見せた。
最初に遠藤の不調が囁かれたのは、3月下旬だった。リーグ戦、ガンバ大阪は開幕から第5節の磐田戦まで、2敗3分で勝ち星なしという異常事態に見舞われた。チームの不調と足並みを揃えるように遠藤のプレーにも異変が起きていた。体が重そうで、運動量は激減し、ボールを奪われる率も高くなり、ミスも増えた。得意のパスの精度も落ちていた。
それは、ガンバの選手たちも微妙に感じ取っていた。山口智は、「キックの精度も落ちてきているし、判断もブレてるかなぁ。ボールを持てばいいのにさばいたり、はたいたらいいのに持ったり……。足元ばっかりが多いんでリズムも良くない。いい時のヤットと比べると物足りなさは感じましたね」と、エースの不調を心配していた。
セルビア戦で左太もも裏の筋膜炎を発症し、治療に専念。
4月7日のセルビア戦前には一人だけ都内に移動し、メディカル・チェックを受けたという情報も流れた。
「都内には行ったけど、検査なんかしていない。検査するなら大阪に戻るでしょ。まぁいろいろ書かれるのは、チームの調子が上がらないから。これで5連勝とかしていたら絶好調とか言われるんだろうけど、今は勝てないからね。その中でのプレーだけに、いくらいいプレーをしてもクローズアップされない。逆にミスが1じゃなく、2にも3にも見られるし、余計に調子悪く見えるんでしょ」
遠藤は、そう受け流していたが、セルビア戦も明らかに精彩を欠いていた。実際、試合後、遠藤自身も「ボールにたくさん触れたけど、ミスがあったし、特別良かったとは思わない」と、自分のプレーの出来に不満気な表情を見せていた。さらに、この試合で左太もも裏の筋膜炎を発症。W杯に向けて治療に専念することになったのである。