スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
レブロンもコービーもTV局が操る!?
NBAプレーオフに見る米国スポビズ界。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNBAE/Getty Images
posted2010/05/19 10:30
試合後、セルティックスのケビン・ガーネットと健闘を讃え合うレブロン・ジェームズ
5月の頭にシアトルに取材で行ってきた。マリナーズ対エンジェルス、イチローと松井の初対決を見たかったのだが、アメリカではスポーツニュースのトップはNBAプレーオフである。
プレーオフはいま、まさに佳境を迎えている。
そのNBA、今季最大の注目は……
「コービーとレブロンの対決が見られるか?」
これに尽きた。
レイカーズのコービー・ブライアントとキャバリアーズのレブロン・ジェイムスは、現在、NBAの二大マネーメーキング・スターであり、誰もがふたりのファイナルでの対決を望んでいるような存在だ。
ところがレブロンの右ひじの具合がおもわしくなく、セルティックスとのカンファレンス準決勝の第5戦ではホームゲームなのに、シュートは14本中3本の成功にとどまった。
結局、これがシリーズの分岐点となりセルティックスがマジックとのカンファレンス決勝に駒を進めることになった。
セルティックスは人気チームだが、それでもレブロンとコービーの対決を期待していたファン、メディアにとっては「マジかよ」という展開になってしまっただろう。
レブロンは今季終了後、キャバリアーズとの契約が終了する。ファイナルが終わったら、NBAはその話題で持ち切りなりそうだ。
NBAの人気者は週末にお仕事をする。
アメリカのテレビ局はスポーツ中継でも「スターシステム」を取っている。
数字(=視聴率)が必要な時間帯には、スターを投入する。これ、常識。
中継日を調べていくと、これがハッキリする。プレーオフになると4勝0敗で決まるシリーズもあれば、最終戦までもつれるケースもある。そうなると、プレーオフの一回戦が終わっていないうちから、他のチームの同士のカンファレンス準決勝が始まってしまう場合が出てくる。
そういうときに、どのシリーズをどの日程から始めるのか大きな発言権を持っているのが、放映権を持つテレビ局なのである。
最近だと、週末のいい時間帯にレイカーズとキャバリアーズの試合が放送されることが多い。
たとえばレイカーズとジャズのカンファレンス準決勝の日程は……
・第1戦 5月2日(日) レイカーズ 104-99 ジャズ
・第2戦 5月4日(火) レイカーズ 111-103 ジャズ
・第3戦 5月8日(土) レイカーズ 111-110 ジャズ
・第4戦 5月10日(月) レイカーズ 111-96 ジャズ
第2戦の火曜日と第3戦の土曜日の間が3日も空いたのは、週末にどうしてもレイカーズ戦を入れたいというテレビ局側の意向が働いたと見える。だって、金曜日にやってもまったく不思議はないんだからね。