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ラミレスの日米通算安打はスルー?
目指せ外国人初の日本通算2000本!
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/07/11 11:50
2010年には王貞治を超えるプロ野球新記録の8年連続100打点を記録しているラミレス。当時は2000本安打を達成した上で名球会入りし、「いつの日か日本のチームで監督をやりたいと思っている」と語っていた。
大記録が達成されたにしては、あまりにも寂しい光景だった。
7月5日、横浜スタジアムでのDeNA対巨人。5回裏、DeNAのラミレスはこの日2本目となる安打を右中間に放ち、左手を伸ばし右手を引くお決まりのガッツポーズを見せた。ただ、そのパフォーマンスは常日頃から行っているため、さほど珍しいものではない。次の回、レフトの守備に就き、スタンドへ向かって軽く一礼したものの、ほとんどのファンは、それが具体的に何を意味しているのか分からなかったことだろう。
ラミレスは、この右中間への二塁打で日米通算2000本安打を達成したのだ。
記念すべき2000本安打に対し、何の演出もなかった横浜スタジアム。
テレビ中継やインターネットの速報では、その快挙が早々と伝えられた。
しかし、どこよりも先に知らせなければならない横浜スタジアムで応援するファンに球団は、最後までそれを告げることはなかった。
「え? ビックリした。今知ったよ。(事前に)あんまり騒いでいなかったからかな? それはそれは、おめでとうございます!」
試合後、報道陣にそのことを教えられると、中畑清監督は虚を突かれながらもラミレスへ祝辞を贈った。
チームの指揮官ですらその事実を知らなかったわけだから、球団がそれを把握していたとは考えにくい。
そもそも、二カ国による通算記録というのは、ファンの関心事としてあまり高くないのだろう。2008年にイチローが日米通算3000本安打を達成した試合でも、電光掲示板にそのことが告げられるまでほとんどの人間が偉業達成に気づかなかったそうだ。
しかしながらDeNAは、たとえこのくらいの演出であってもラミレスの2000本安打を讃えるべきではなかったか。
ただ、ラミレス本人は「日本のファンに認めてもらったとは思っていないよ」と、自らの記録を球団に素通りされてしまったことについてあまり気に留めていないようだ。
「(日米通算2000本安打という)ひとつの記録を達成できてベリーハッピー。ただ、本当の意味で2000本安打を達成したつもりはありません」