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<“五輪から3カ月”特別連載(2)> クロスカントリー・夏見円 「自分らしくスタートに立つ!」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2010/05/18 06:00
専門外の30kmクラシカルで掴んだ大きな自信。
吹っ切れたあとの2月27日には、夏見にとってまったくの専門外の30kmクラシカルに出場。
「リレーが終わったら、コーチが『今日すごいよかったし、30km行っちゃうか』って。え、絶対出ないと言っていたんですよ」
結局、のちのちスプリントにもつながるということで出場を決めた。
「7kmくらいでがっくりきて。上りはもう歩いて、これ絶対だめだ、10kmで終わりか、と思っていたんですけど、いつのまにか体が復活してきて。20kmくらいから調子よくなって、ぐんぐん抜いていって、結局、(出場した53人中)31番でゴールして、終わりよければすべてよし、みたいな雰囲気で。最終的にはスタートしてよかった。
終わってキャビンに帰ったら、(チームの)みんなが『やったあ!』みたいな、おかしなテンションになっていて。(石田)正子のほうがすごいのに。ここまでやると思ってなかったんでしょう(笑)。専門外だけど、なんか自信になりました」
バンクーバーで得た糧を来年2月の世界選手権に生かす。
そしてあらためて、バンクーバー五輪を語った。
「バンクーバーは、うん、いまいちでした。でも、いろいろ気づくことができてよかった。しかも大会の期間中に気づいたのが大きいんですね。あとから誰かと話していて気づいたとしても、それは忘れがちです。でも大会で気づいたことは、過去の経験から言っても忘れることはありません。あ、あのときはこうだったな、と思い出せる。これからにつながっていくと思います」
来年2月には、ノルウェー・オスロで世界選手権が行なわれる。クロスカントリー発祥の国での開催である。オリンピックに等しい価値を持つ、いや、オリンピック以上だと言う選手もいる大舞台である。
明るい表情で話す夏見円は、オリンピックで得た糧とともに、前を見つめる。