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<ナンバーW杯傑作選/'97年12月掲載> 「We did it! 伝説が作られた夜」 ~金子達仁が見たジョホールバル~
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byNaoya Sanuki/Kazuaki Nishiyama
posted2010/05/13 10:30
“キング・カズ”の時代から“新たな時代”へ――。
だが、イランとの決戦前日、彼の表情はずいぶんと明るいものになっていた。
「ベンチとロッカールームがね、ワールドユースの時とは逆なんですよ。良かった」
おそらく、日本代表選手の中にも、柳沢や中村たちがこの会場で、このロッカールームで涙を流したとは知らない選手がいたはずである。ゲンやジンクスには興味のない選手であれば、知っても平然と受け流したかもしれない。
だが、並木は素直に喜んでいた。逆に言えばそれだけ、日本は追い詰められていたのである。
だが、それも済んだ話だ。
4年前、ドーハでの最終予選は“キング・カズ”という一つの伝説を生んだ。'97年11月16日は、日本が初めてワールドカップ出場を決めた日であると同時に、日本サッカーのリーダーシップが新たな世代に受け継がれた日として記憶されるかもしれない。
「長かったよ、疲れたよ。日本に帰ったら、うまいモン御馳走してくれるんでしょ」
素直ではない、悪ぶるのが好きな20歳を旗手とする新たな時代に――。