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モナコGPで目撃した驚異の頭脳戦。
超スローペースで勝利したウェバー。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2012/05/30 10:30

モナコGPで目撃した驚異の頭脳戦。超スローペースで勝利したウェバー。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

今季これまで6つのレースで6人の優勝者が誕生している。ウェバーはモナコで2度目の勝利。2位となったロズベルグは中国GPでの初優勝に次ぐ2位フィニッシュ。このレースで3位に入ったアロンソがドライバーズポイント単独トップとなった。

 日曜日の朝、ポールポジションからスタートするマーク・ウェバーの元に、友人からこんなメールが届いた。

「主導権を握っているのは君だ。ポールポジションからスタートするんだから、レースの行方は君に委ねられているから大丈夫」

 1929年に初めてグランプリが開催されたモナコGPは、今年が70回目の記念大会となった。伝統の一戦の舞台は形は変われど、83年が経過したいまも狭く曲がりくねった市街地コースのままだ。50回大会となった'92年は、予定外のピットストップを強いられてトップの座を明け渡したナイジェル・マンセルが、1周1秒以上速いペースでレース終盤、アイルトン・セナとテール・トゥ・ノーズの激しいバトルを演じたものの、結局とらえることはできなかった。

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 それゆえ、モナコではポールポジションをこんな言葉で表現する。

「F1サイドポンツーンの中で勝利へもっとも近い場所」

 2012年のモナコGPで、その指定席を得たのはウェバーだった。前日の予選で2位に終わったウェバーだったが、予選1位を獲得したミハエル・シューマッハが、前戦スペインGPのレースでブルーノ・セナに追突して「5グリッド降格」のペナルティを科せられていたため、繰り上がったのである。

かつてのように「ポールポジション=優勝」にはならないモナコ。

 ただし、現在のF1は'90年代までとは違うルールが存在するため、モナコといえども、かつてほどポールポジションが勝利に近い場所ではなくなった。そのルールとは、レースでは雨が降ってレインタイヤを履いた場合を除き、2種類持ち込まれたタイヤをどちらも最低1回は装着して走行しなければならないというものだ。

 さらに、現在のF1はトップ10からスタートするドライバーは、予選Q3でベストタイムをマークしたときに装着していたタイヤでスタートを切らなければならない、というルールも付け加えられている。

 どのルールも、ポールポジションからの逃げ切りを簡単には許さず、レースのエンターテイメント性を高めるためにあるのだ。

【次ページ】 1回ピットストップ作戦で一気に挽回を狙ったベッテル。

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