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フランク・ウイリアムズも70歳――。
8年ぶりのF1優勝にみた先見の明。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2012/05/16 10:30
スペインGPを制したパルトール・マルドナドについて尋ねられたフランク・ウイリアムズは「マルドナドは非常に速いだけでなく、ミスもしないからね」と答えた。マルドナドは年間王者になれる資質がある、という旨のコメントも。
ウイリアムズのディッキー・スタンフォードと、ポディウムで喜びを分かち合うパストール・マルドナドの姿を見ながら、11年前の光景が目の前に浮かんだ。
スタンフォードはチーム創設者であるサー・フランク・ウイリアムズが半身不随になってから、表彰台でコンストラクターズ代表として表彰式に出席する任を預かるチームマネージャーである。そのスタンフォードに2001年のイタリアGPでシャンパンをかけたのが、初優勝を飾ったファン・パブロ・モントーヤ。ウイリアムズにとっての前回の優勝……2004年の最終戦ブラジルGPで優勝した時のドライバーも、このモントーヤであった。
1966年にフランク・ウイリアムズによって興されたフランク・ウイリアムズ・レーシングがF1に参戦したのは1969年。しかし、大企業からの支援を持たないウイリアムズのレース人生は、常に資金難との戦いでもあった。
'73年には破産寸前にまで追い込まれ、チームの株式をカナダの大富豪、ウォルター・ウルフに売却。
チームを追われたウイリアムズが、パトリック・ヘッドを引き連れて新たに設立したのが、現在のウイリアムズ・グランプリ・エンジニアリングである。
フェラーリ、マクラーレンと異なり、勝利至上主義ではない。
F1がスタートした'50年から参戦しているフェラーリと、'66年にブルース・マクラーレンによって設立されたマクラーレンに次ぐ歴史を持つウイリアムズは、現在のF1で「三大古豪」チームである。しかし、この老舗チームには、フェラーリやマクラーレンとは異なるフィロソフィが流れている。それは勝利至上主義よりも、新しい分野への挑戦を優先させるチャレンジングスピリットである。
例えば、'82年にはリアタイヤを4輪にしたユニークな6輪車を開発。'83年からは当時のF1チームとして初めて日本のエンジンメーカーであるホンダと手を組み、その後の大躍進の足がかりを作った。ホンダとの契約が解消された後は、アクティブサスペンションの開発に着手。空力の天才と言われるエイドリアン・ニューウェイを獲得したのも、ちょうどこのころだった。