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絶妙の難易度、熱心で平等なファン。
鈴鹿はF1ドライバーにとって特別だ。
posted2016/09/25 08:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
AFLO
「東京から新幹線に乗って鈴鹿へ向かう、あの雰囲気が好きだ」(ロマン・グロージャン/ハース)
グランプリをレースだけに限定せず、祭り事としてとらえた場合、日本GPはすでに自宅を出発して、鈴鹿へ向かった瞬間からスタートしているといってもいいだろう。海外のドライバーにとっては、来日した瞬間がそうである。2013年のレースでスタート直後にトップに立ち、レッドブル勢と激しい優勝争いを演じたグロージャン(当時ロータス所属)は、日本に到着した後、東京を探索したり、日本食を堪能してから鈴鹿へ向かうのが好きだという。
東京から新幹線で名古屋へ向かう車中も、F1ドライバーにとってはエキサイティングな時間だ。「新幹線のトップスピードは時速300km!! まるでF1マシン」と語るのはロズベルグ(メルセデスAMG)。名古屋で在来線に乗り換えて到着した白子駅では、歴代日本GP優勝者の名前が刻まれた記念のモニュメントがドライバーを温かく迎える。
それだけではない。駅からホテルへ向かう通りには、あちこちに日本GPのノボリが立てられ、街全体がF1を歓迎していることを感じる。F1はヨーロッパで誕生した文化だが、その一部として、いまや鈴鹿は欠かせない存在になっている。
攻めないとタイムが出ないけど、攻めすぎると……。
「攻めないとタイムが出ないけど、攻めすぎるとミスしてしまう、あの難しさが好きだ」(小林可夢偉)
鈴鹿が世界でも屈指のドライバーズサーキットであることは有名である。その理由のひとつは、1コーナーに進入してから7つ目のコーナーとなるダンロップまで、コーナーが連続しているチャレンジングなセクター1区間にある。「ひとつミスすると、次も、そしてまた次もミスを引きずる難しさがある」と可夢偉はかつて語っていたことがある。
ただし、鈴鹿の難所はセクター1だけではない。今シーズン、メルセデスAMG勢に次いでドライバーズ選手権で3位につけているレッドブルのダニエル・リチャルドは「セクター1を過ぎた直後のデグナーこそ、鈴鹿の醍醐味。入口で攻めすぎると出口で必ずコースオフしてしまうんだ」と、その難しさを説明する。