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ホンダの2019年は記録ずくめだった。
V字復活を可能にした「総力戦」。

posted2020/01/05 19:00

 
ホンダの2019年は記録ずくめだった。V字復活を可能にした「総力戦」。<Number Web> photograph by Getty Images

フェルスタッペン、C・ホーナー代表と'19年ブラジルGPの勝利を祝う(左から)田辺TD、山本MD。

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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 F1復帰から6年目、2020年のホンダは新たな領域に足を踏み入れようとしている。

 '19年、ホンダは自らのF1活動において、さまざまな記録を更新した。開幕戦では'08年イギリスGP以来、11年ぶりに表彰台に上がり、第9戦オーストリアGPでは'06年ハンガリーGP以来、13年ぶりとなる優勝を飾った。

 第11戦ドイツGPでは'92年ポルトガルGP以来、27年ぶりとなるダブル表彰台を手にし、続く第12戦ハンガリーGPでは'06年オーストラリアGP以来、13年ぶりのポールポジションも獲得した。

 マックス・フェルスタッペンが'91年オーストラリアGPのアイルトン・セナ以来となるポール・トゥ・ウィンを飾った第20戦ブラジルGPでは、トロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーも2位に入り、ホンダ勢がワンツーフィニッシュ。これは'91年日本GP以来、28年ぶりの快挙だった。

 '19年にレッドブルとともに達成したコンストラクターズ選手権3位は、ホンダが'15年に復帰して以降、最高の成績となった。 

 なぜホンダは2019年、こんなに強くなったのか? その答えを探る鍵となったのが、社内の垣根を取っ払うという勇気ある決断だった。 

「このエンジンをゴミ箱に捨てろ!」

 話は2年前に遡る。当時ホンダはマクラーレンにパワーユニットを供給してF1を戦っていた。復帰3年目のホンダはこの年、王者メルセデスに追いつくためにパワーユニットのコンセプトを一新。

 だが、あまりにも大がかりな変更を行ったため、新しいパワーユニットは予定していたよりも性能が上げられなかっただけでなく、信頼性にも乏しい代物となってしまった。 

 そのパワーユニットを搭載したウインターテストで、初めてコースを走らせてピットインしたフェルナンド・アロンソに、ホンダのエンジニアが「パワーユニットはどうだった?」と尋ねると、こう吐き捨てられたという。

「いますぐ、このエンジンをゴミ箱に捨てろ!!」

【次ページ】 マクラーレンからもプレッシャー。

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