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【ユーロ2012 グループC展望】
大本命スペインに危険信号が点滅!?
“脱カテナチオ”のイタリアが急浮上。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2012/06/02 08:00
イタリア代表の国内合宿でのひとコマ。チーム浮沈の鍵を握るバロテッリ(後)とカッサーノは、イタリア人選手の中でも一、二を争う“悪童”ぶりでも有名だが……。
底知れぬポテンシャルを秘めた“異端児”バロテッリ。
不安材料は大腿部に故障を抱えて合流が遅れたDFキエッリーニと、シーズン途中に心臓の手術を受け、ピッチに戻って来たばかりのカッサーノのコンディションである。
最終ラインにはユベントスのリーグ制覇を支えたボヌッチやバルザーリ、前線にはベテランFWディナターレや進境著しいジョビンコなど代役候補がいるが、攻守の要である2人がピッチに立てなければ、戦力ダウンを強いられることは間違いない。
そうした不安を一掃するカンフル剤となり得るのは、底知れぬポテンシャルを秘めた“異端児”バロテッリである。
カッサーノを“大人”にした指揮官プランデッリは、誰もがその才能を認める不安定な“少年”をどのようにコントロールするのか。もしスペインとの初戦で最前線に天才肌の“新旧問題児”が並び立つようなら、イタリアは本当の意味で“カテナチオ”から脱却したと言えるだろう。
無類のタフネスを誇るアイルランドが2強に食い下がる。
アイルランドとクロアチアにも、スペインとイタリアの2強体制を崩すだけの力はある。
南アフリカW杯予選プレーオフにおける“疑惑の判定”を乗り越え、アイルランドを24年振りのユーロ本大会出場に導いた名将トラパットーニは、選手たちの精神力を高く評価し、大舞台で自ら巻き起こす旋風を予感している。
「スペインのように飛び抜けた選手がいるわけでも、優れた技術があるわけでもない。しかし我々は、誰よりも強いハートを持っている。それさえあれば、十分に戦えるはずだ」
チームの中心はFWキーンやMFダフ、GKギブンといった'02年日韓W杯組、さらにDFダン、オシェイ、MFアンドリュース、ハントと30歳を超えたベテランが多いが、MFマクギーディ、FWドイルら中堅組も急成長を遂げている。レギュラー候補の一人だったMFファヒーの故障離脱は痛手だが、チームには近年例を見ないほどの安定感がある。5月26日にはボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合に勝利し、無敗記録を13にまで伸ばした。
南アフリカW杯への出場を疑惑の判定に妨げられた彼らには、国際舞台に懸ける積年の思いがある。持ち前のタフネスを発揮して食い下がれば、スペインやイタリアにも堂々たる戦いを挑めるはずだ。