欧州CL通信BACK NUMBER
チェルシー悲願のCL制覇を達成した、
モウリーニョ門下生達が見せた“魂”。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byMaurizio Borsari/AFLO
posted2012/05/21 12:15
ビラスボアス監督のもと、極度の不振に陥っていたチェルシーだが、3月初旬にディマッテオ監督が就任すると調子を上げ、欧州の頂点へと駆け上がった。
モウリーニョが育てた「質実剛健集団」の8年越しの悲願。
感極まってピッチに倒れたドログバ。代行キャプテンの重責を果たしたランパードは、ピッチに跪いて歓喜の雄叫びを上げた。スーツ姿で観戦していたテリーもユニフォームに着替えて祝福の輪に加わり、マイクを向けられたコールは、「この日のために俺は(アーセナルから)チェルシーに来た」と、力強く語った。彼らはいずれも、ロマン・アブラモビッチの資金力を後ろ盾に、ジョゼ・モウリーニョ(現R・マドリー監督)の下で8年前に誕生した、「質実剛健集団」を代表する主力中の主力だ。チェルシーは、本来の姿に立ち返り、8年来の大目標であるCL優勝を成し遂げた。
その間には、スタイルの原型を築き、勝者のメンタリティーを植え付けたモウリーニョを皮切りに、計6名の監督がチェルシーに招かれては、去っていった。タイトル獲得とエンターテイメント性の両立を要求し、意のままに監督の首を挿げ替えるロシア人富豪には、「冷酷な暴君」のイメージが定着した。だが、数あるトロフィーの中でも、「専制君主」が最も切望していた“ビッグ・イヤー”は、サッカー自体の見所は乏しくとも、「チェルシー魂」という人間味に溢れるパフォーマンスによってもたらされた。
表彰セレモニー前のスタジアム。スタンドで「サンキュー」と声をかけながら、チームの面々を出迎えたチェルシー・オーナーの目は、涙で潤んでいた。