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“確実性”の女子と“高難度”の男子。
NHK杯で体操の五輪代表選考を追う。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2012/05/08 10:30
勢揃いした日本代表選手たち。後列左から、田中佑典、加藤凌平、山室光史、田中和仁、内村航平。前列左から、新竹優子、鶴見虹子、寺本明日香、美濃部ゆう、田中理恵。
5月5日、NHK杯の2日目が終わり、体操のロンドン五輪代表が決まった。
選考方法は、男女それぞれ異なる方式で行なわれた。
女子は4月7、8日に行なわれた全日本選手権と5月4、5日のNHK杯の合計得点の上位5名が自動的に代表に選出。
全日本選手権、そしてNHK杯の1日目を終えての首位は田中理恵。そして2位に寺本明日香、3位に笹田夏実と高校2年生コンビが続き、4位に新竹優子、5位に美濃部ゆう、6位に鶴見虹子と、北京五輪代表組が並んだ。
迎えた最終日は、選考会らしい展開となった。
たったミスひとつで、代表になれるかどうかが決定する女子の選考。
上位6名による第1班は、難度を抑えた選手が目立つ。確実性を優先させてのことだろう。それだけにミスひとつが命取りになる。
最初の種目の跳馬では順位は変わらず、続く段違い平行棒。この種目で新竹がミスをする。最後の降り技でバーに足があたったのだ。着地はまとめたものの13.000と伸び悩み4位から6位に後退。かわって鶴見が5位へ。
3種目めは平均台。今度は笹田がミス。演技中盤でバランスを崩し、台に手をついたのだ。14.900の高得点をマークした美濃部を筆頭に、他の選手も13点台でまとめたのとは対照的に、12.500で6位に下がる。笹田は最終種目のゆかでも、着地でラインオーバーするなどミスが出て再逆転はならなかった。
最終順位は上から田中、美濃部、寺本、鶴見、新竹。この5人が代表となった。
最後の最後で五輪代表の切符を握れた理由は“経験の差”。
選考会最終日という重圧の中、彼女たちが切符を手にすることができたのはなぜか。
鶴見は「緊張しても思い切りやれました」、新竹は「思いきってやるしかないと思ってやりました」と語った。それが実行できたのは、やはり経験だ。
北京五輪組はむろんのこと、オリンピックに出場していない田中も'10年から世界選手権などで場数を踏み、寺本は昨年、東京で開催された世界選手権に出場している。
対する笹田は「頭が真っ白になるくらい緊張していました」と振り返っている。笹田にとっては、この経験が今後に生きるはずだ。