野ボール横丁BACK NUMBER
「巨人の敵は巨人」ということか?
不振の理由は“内なる戦い”にあり。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/04/24 12:30
なかなか勝利の波に乗れない原辰徳監督。「歯車がかみ合わないですね……。チームを救うような男が出てこないと」と苦しい胸の内を漏らすことも。
チーム打率と防御率は悪くないのに、なぜ最下位なのか?
興味深いデータ(4月23日現在)がある。
セ・リーグの順位を見ると、5位までは、チーム打率も、チーム防御率も、きれいに順位通りになっているのだ。
つまり、上位のチームほどチーム打率が高く、かつ、チーム防御率は低い。パ・リーグもだいたいこの法則があてはまる。チーム打率は若干ばらつきがあるものの、チーム防御率は1位から6位まできれいに順位順になっている。
その法則から唯一、外れているのが巨人なのだ。巨人はチーム打率が4位、チーム防御率にいたっては3位であるにもかかわらず、順位は6位なのだ。
打っても、抑えても、それがチームの勝利に結びつかない。つまり、それはチームとして戦えていない、ということだ。
どうしても、選手とスタッフの信頼関係がうまくいっていないのではないかと想像してしまう。
ベテラン勢をうまく使って結果を出している高木・中日。
たとえば、小笠原道大などは本当のところどう思っているのだろう。いくら調子が悪いとはいえ、あれだけの大打者でありながら、下位打線を任され、打てなければすぐに外されてしまう。
今季で言うと、それと対照的なのが中日である。
開幕前は山崎武司や川上憲伸ら、ベテラン勢ばかり獲得してどうするのだと揶揄されたものだが、その山崎は4番としてチームを牽引している。
また、昨年24年ぶりに未勝利に終わった46歳の山本昌に対しても、高木守道は監督に就任するなり開幕投手候補であることを明言し、言外に必要な投手であるというメッセージを伝えた。そして、ここまでリーグトップの防御率を残している。
それなりの実績を残したベテラン勢が欲しているものは、「競争」よりも「信頼」だ。中日の好調ぶりは、そのことを証明しているように思う。
キャンプ中は、確かに、チーム内でライバル意識を剥き出しにし、競争することは必要かもしれない。だがシーズンに入った以上、もはや敵は「内」ではなく「外」にいる。
今の巨人にもっとも必要なものは、個と個をつなぐ「信頼」かもしれない。