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自ら剛速球を捨てた五十嵐亮太。
メジャー入りならずも揺るがぬ意志。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2012/03/30 11:30

自ら剛速球を捨てた五十嵐亮太。メジャー入りならずも揺るがぬ意志。<Number Web> photograph by Getty Images

直球を捨て、新たな変化球としてカーブとスライダーを習得した五十嵐亮太投手。3月29日、パイレーツとのメジャー契約が実現せず、再びのマイナー契約、もしくは日本球界復帰も視野に入れたFAとして他球団との交渉に入ることになる。

過去のスタイルを捨て去ることで得た、新たな投球術。

 そして完全に袋小路に入り込んでしまった五十嵐。もがきながらも彼が出した結論は、自分を捨て去ることだった。

 シーズンも残り1カ月しかない2011年の夏の終わり。まず、これまで回転の良さを意識していた真っ直ぐの握りを、フォーシームからツーシームに変え、直球そのものを動かすことを目指した。そして決め球としてスライダーを加えたのだ。

 実はヤクルト時代にも球種を増やす試みを行なっていた。その際にスライダーを試投したこともあったという。だが結局は途中で諦め、これまでと同じ投球スタイルを貫いていた。

「投手として成長していく上で、新しい球種を増やす必要性はずっと感じていました。スライダーだけでなくカッターも試したことがありましたが、途中で止めてしまいました。投球スタイルを変えるというのはすごく勇気がいることだし、日本では自分の投球が通用していたので、あまり必要性を感じなかったというのもあります」

 球種を増やした五十嵐の決断は正しかった。投げ始めたばかりの、まだ完成されていないスライダーだったが、本人の思惑通りに打者を翻弄した。投球に成績も伴い、2011年9月の月間成績は2勝0敗、防御率3.38でシーズンを締めくくることができた。

徐々に手応えを感じてきた矢先に……パイレーツから通告が。

 その後、メッツとは再契約できずFAとなったが、ドミニカのウィンターリーグに参戦。そこでスライダーに更なる磨きをかけながら好投を続け、パイレーツとのマイナー契約をもぎ取った。

 契約後は現在の投球スタイルに合わせた身体づくり(主に上半身の強化)を行なうために、キャンプイン直前までロサンゼルスで自主トレの日々を送った。

 とはいえ、新たな投球スタイルで実戦を積んだのはわずか2カ月あまり。五十嵐の中で自信が芽生え始めている一方で、オープン戦の結果が物語るようにまだまだ完成されたものではないという不安もつきまとっていた。だから、今回の無情の通告は実戦と修正を重ねながら少しずつ追い求める投球に近づいていた矢先のことだった。

「自分の中ではようやく(メジャーの打者に対抗できる)武器が揃ったんじゃないかと思いますし、自分の思い通りに投げられれば抑えられるという自信も感じられるようになってきています。

 それでもここは結果がすべての世界。自分の投げるボールで手応えを感じていたんですが、コンスタントに自分の投球ができなかった。それを踏まえて今の自分の実力なんだと思います。それは僕に原因があることなので、またそこを改善していくことで新しい自分が見えてくると思います」

 今回、五十嵐がパイレーツと結んだ契約は、開幕メジャー入りが実現できなかったなら、FAで新たに所属先を探せるという条項がついていた。

 メジャー契約ができなかった場合、マイナー契約選手としてパイレーツに残留するか、4月1日から設けられる7日間の交渉期間中に、日本球界復帰も視野に入れながら新しい所属先を探すかを検討することになる。

【次ページ】 「メジャーに残りたかったし、悔しいですけど……」

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五十嵐亮太
ピッツバーグ・パイレーツ

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