スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
主力の復活と新球場の建設。
~期待膨らむマーリンズの今季~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/03/26 10:30
昨季はわずか9試合の登板にとどまったジョシュ・ジョンソンだが、キャンプは順調に消化。復活に期待したい。
ダルビッシュ有がライアン・ブラウンを討ち取った。青木宣親が1試合に3安打を放った。イチローがホームランを打った。ジャスティン・ヴァーランダーが試運転を始めた。
まだまだ練習の延長とはいえ、球春は確実に近づいている。毎年のことだが、やはり胸が躍る。いい季節だ。野球に対する飢えが、もうじき癒される。
少し前のコラムにも書いたが、今季の大リーグで私が注目しているのはマイアミ・マーリンズだ。補強の充実(ホゼ・レイエスやマーク・バーリーやヒース・ベルが新戦力として加わった)についてはすでに触れた。
だが、もっと大きな要因が、ここへ来て浮上してきた。
最大の注目点は、ハンリー・ラミレスとジョシュ・ジョンソンの戦列復帰である。
左肩が癒えた「問題児」ラミレスは精神的にも成長。
ラミレスは2006年に新人王を獲得し、'09年には首位打者に輝いた。'08年から'10年にかけては3年連続でオールスター出場。1983年12月生まれだから年齢はまだ28歳で、ドミニカ出身の選手としてはアルバート・プーホルスに次ぐ逸材と評価する人もいる。
だが、2011年のラミレスは散々だった。左肩を痛め、たった92試合にしか出場できなかっただけではない。打率=2割4分3厘、本塁打=10本、打点=45、長打率=3割7分9厘は、どれをとっても'06年以降では最悪の数字だ。彼は、戦列を離れて左肩の手術を受けた。
幸い、手術はうまく行った。肩だけでなく背中まで痛みが広がっていたため、去年の彼はまったく力を発揮できなかったのだ。その故障が治って、スイングに力強さが戻ってきた。レイエスの加入で、遊撃から三塁にコンバートされたが、これも問題はなさそうだ。なによりも、精神面の成長が大きい。若いころの彼には「問題児」のレッテルが貼られていたが、いまはよけいなトラブルを起こさなくなった。守備位置の配置転換に関しても、不満を漏らしたという噂は伝わってこない。
ジョンソンが先発の柱になればマーリンズは本命に!?
ジョンソンの復活も、マーリンズには嬉しい知らせだ。こちらも年齢は28歳。けっこう長く投げているように感じられるのはデビューが早かったためだ。22歳の'06年には12勝を稼いでいるし、'09年と'10年にも2年連続で2桁勝利をあげている。'10年の防御率(2.30)はナ・リーグ第1位だった。
ジョンソンの強みは、投球回数がそんなに多くないことだ。一番多く投げたのが'09年の209イニングスで、ほかに150イニングスを超えた年は2度('06年と'10年)しかない。裏を返せば、肘に爆弾を抱えていることの証明でもあるのだが、これだけの潜在能力を持ちながら、肩の使い減りがないというのは大きな魅力だ。そんなジョンソンが投手陣の先頭に立てば、マーリンズはナ・リーグ東地区の本命フィリーズを蹴落とせるかもしれない。