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<ロンドン五輪を決めた男に学ぶ> 藤原新 「東京マラソンで日本人1位になった練習方法、教えます」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byMiki Fukano
posted2012/03/23 06:01
「レースでは、人を抜きたくなっても3回我慢しろ」
クロスカントリーはタフな体を作るためにマラソン練習を始める前に取り入れています。重要なのはコースで、ある程度の平地が続くなかで、アクセントとしてアップダウンがあるといい。坂が長いと、上りと下りで完全にリズムが変わってしまう。マラソンで必要なのは一定のリズムで走ることですから、そのなかでいろいろな負荷を詰め込めるコースが理想です。そういう場所は意外と少ないのですが、僕が使う富士見高原のコースは理想的。都内だと野川公園のコースもおすすめです。
僕が一般の人によくアドバイスするのは、レースでは必ず気持ちが高揚して人を抜くのが楽しくなる時があるけど、3回我慢しろということです。そうしたらラスト5kmはスイートだよって。
東京マラソンではその教えを守れなくて“どうしよう”って思ったけど、幸いラスト2.195kmはスイートでしたね(笑)。
「この苦しみに耐えてる俺ってどうよ!」みたいな自己陶酔。
長距離を走るために必要なのは、痛みや苦しみを自分の中でどう解釈して、その先をどう明るくイメージできるかだとも思います。その苦しさが何かを達成するためのプロセスならば、それは受け入れるべきだし、苦しみというより、快楽だとも思えるんです。
僕はたまに河川敷の土手をダッシュするんですが、上がりきったらピタリと止まるという練習をします。すると乳酸が溜まってきて、5秒後くらいにジワッときつくなってくる。(アーノルド・)シュワルツェネッガーは、それが最高に気持ちのいいことだと言ってるそうだけど「この苦しさが自分を強くするんだ」と思えば、本当に気持ちよく思える。
走ることの楽しさというのは、やったことがすぐに順位やタイムでフィードバックされることですね。ロールプレイングゲームのレベル上げみたいなものです。その喜びを得ようとして苦しみに耐えるには、ある意味自己陶酔は必要でしょう。「この苦しみに耐えてる俺ってどうよ!」みたいな。だからマラソンに関しては、ナルシストも許しましょう。