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<ロンドン五輪を決めた男に学ぶ> 藤原新 「東京マラソンで日本人1位になった練習方法、教えます」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byMiki Fukano
posted2012/03/23 06:01
全国からRUNを愛する人々が集う日本最大の大会で、
Number Doはスタートからレースを追いかけ、
ゴールに辿りついた人々の声に耳を傾けました。
Number Webではその中から、東京マラソン日本人1位となり、
ロンドン五輪男子マラソン代表の座を射止めた
藤原新選手に伺った独自の練習法を特別に公開します。
2月26日に開催された東京マラソン。男子ロンドン五輪代表選考会でもあったこのレースで日本人1位になり、五輪代表の座を手元に引き寄せたのは、30歳の藤原新だった。
'10年3月に実業団を退社してプロランナーとして独立。しかし昨年10月末にはスポンサー契約を解除されるなど、窮地で叩き出した、自己記録の2時間7分48秒。その陰には自ら考えた独特の練習法があったという。
毎週のように試合に出るという“川内メソッド”を応用。
そもそも、夏場は故障していて遅く走ることしかできなかったんです。だから9月まではクロスカントリーなどで、ゆっくり長く走ることで下地を作っていました。10~11月になると少しずつスピード練習も入れられるようになってきて、徐々に体もできてきた。
そして12月中旬からは、毎週のように試合に出るという川内(優輝)くんの取り組みを参考にしたんです。“川内メソッド”とでもいったらいいでしょうか。
ただ、僕の場合は川内くんのようにしょっちゅう試合に出るというのは面倒くさいからレースに近い負荷をかける練習をしたんです。
不安だったのはレースに近い形で追い込んだ練習が本番でどう出るか、ということでした。レースは気持ちが高揚してアドレナリンも出るから、練習の3割増くらいの走りができなければ意味がない。20km59分とか、25km走もハーフ通過が1時間2分30秒くらいで練習していたのが、レースでどう生きるか。
それを知りたくて2月5日の丸亀国際ハーフマラソンに出たんですが、納得のいくタイム(1時間1分34秒)で安心しました。
“低いハードルを設定すること”の意外な効果とは?
年明けからは43kmの距離走を3回やりましたが、ラスト5kmを全力で走るなど、どこかでレースを感じるということを意識しました。
市民ランナーの方も、レースを意識した練習をしてそれを本番で活かせれば、順位を上げたりタイムの短縮を狙えると思います。
今回、もうひとつ勉強になったのは、一方で低いハードルを設定することの効果です。
35kmを過ぎてペースを上げなくてはいけない地点が近づいて来ると気分は最低になる。でもその時に「ダメだったら止めていいから、とにかく1kmだけは全力でいけ」と自分の心にハッパをかける。で、やってみるときついけど体は動く。これなら2kmまでいける、3kmまでいけるとなって、終わってみたら「あっ、できちゃった」となるんです。1kmで止めるなら止めていいという心の余裕がなければ、早い段階でブレーキがかかってしまい、全力でいこうと思わなくなる。
僕の場合は朝起きるのが苦手だから、この考え方を朝練でも活用しています。まずは目を開けること、ジャージを着ることが目標。それで外に出て走り出すと気合いが乗って来る。ある意味、現実的なメンタルトレーニングです。