黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
3度目のW杯出場に懸ける稲本潤一。
セルビア戦を冷静に振りかえると……。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byToshiya Kondo
posted2010/04/17 08:00
欧州で7つのクラブを渡り歩き欧州サッカーを知りつくす稲本。日韓W杯のベルギー戦、ロシア戦で得点した男でもあり、ドイツW杯でも玉田圭司のゴールを演出してもいるのだが
4月7日、セルビアに0-3で敗れた後、ミックスゾーンに現れた稲本潤一の表情は、少しばかり強ばっていた。
セルビア戦は、ただの親善試合ではなかった。5月中旬に発表される南アフリカW杯メンバー決定前の最後の試合であり、最後の選考の場でもあった。稲本にとっては、W杯メンバーという椅子取りゲームに勝ち残るようなプレーを見せるのはもちろんだが、もうひとつ狙いがあった。
「3月のバーレーン戦は、海外組が帰ってきて、いいサッカーをして勝った。ああいうサッカーを海外組が来なくても国内組だけで、どれだけやれるか。そして、チーム戦術と完成度をどれだけ高められるか、というのが大きなテーマやった」
バーレーン戦は、右内転筋痛のために出場を控えたため、稲本にとってセルビア戦は2月の東アジア選手権以来の代表戦となる。それだけにここで勝って、自分の評価を高め、海外組不要でもいけるというところを岡田監督にアピールしたかった。しかし、結果は無残なものに終わってしまった。
「ちょっとショックやねぇ」
稲本は、小さなため息をついた。
「欧州にいるよりは、日本にいる方がW杯をより意識する」
稲本は、今シーズン、フランスのレンヌから川崎フロンターレに移籍した。9年ぶりにJリーグに復帰し、久しぶりの日本、しかも新しいチームでのプレーと新鮮な気持ちで挑んでいるが、W杯も今回、初めて日本で調整しながら挑むことになる。
「欧州にいるよりは、日本にいる方がW杯をより意識するね。海外やとW杯の報道とかテレビ番組とかもそんなにないし、それ以前にチームで何を求められてるのかとか、試合に出ることばかり考えていたからね。そういう意味では、日本にいる方がしっかり準備できている感じがする。今は、ちょっと過密日程やけど、しっかり試合にも出れているし、自分の調子も悪くない。このまま行けば過去2大会よりもいい状況でW杯にいけそうな気がする。選ばれたらの話やけどね……」
稲本は、フフフと苦笑した。
川崎では、すでに中心選手だ。アンカーとしてプレーしつつ、ボールホルダーに対してガツガツ厳しくチェックするなど、さすが海外仕込みと唸らせるプレーを随所に見せている。稲本自身も「まだまだ未熟な面もあるけど、攻撃的なサッカーなんで面白い」と、川崎のスタイルを楽しんでいる。