セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
38歳になったインザーギの試練。
戦力外ギリギリでも己を貫けるか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/01/27 10:30
コッパ・イタリアのノバーラ戦は2-1で勝利するも、後半途中交代で下がった38歳インザーギの影は薄く
「インザーギ流」を築いた希有な才能がリストラ要員!?
昨季もサポーターの反発を受けながら、アッレグリはFWロナウジーニョとMFピルロを戦力から外すことでチームバランスを変え、スクデットをもたらした。今季も35歳になったMFセードルフをベンチ要員へ配置転換し、チーム改革を進める。リストラの達人として「リクイダトーレ(清算人、管財人)」という異名までついた。
だが、インザーギはリストラの対象になるような選手なのだろうか。
“Alla Inzaghi”という言葉がある。「インザーギ風」とか「インザーギ流」とかいう意味だ。例えば、世界中どこでもいいが、オフサイドトラップをかいくぐり、相手DFの裏を取るのが得意な若手FWが出てきたとする。その選手はまず間違いなく「インザーギ風だ」とか「インザーギ2世」などと呼ばれるようになる。華麗なフリーキックや豪快なミドル弾ではなく、こぼれ球に反応し泥臭く押し込むカッコ悪いゴールもいわゆる「インザーギ流」だ。
どんな世界であろうが、確立したひとつのスタイルとして自らの名を残せる人間はごく限られていて、インザーギの場合は、もう存在自体がサッカー界のアイコンと化している。キャラが立っている。彼はその名が普遍性を持つに至った稀有な選手なのだ。
サッカー界のアイコンはどの道を選択するのか?
今、セリエAで去就を注目されるもうひとりの名選手といえばデル・ピエーロだ。
昨秋のCLバルサ戦を前に、ミラノ市内のレストランで偶然出くわした旧知の2人は
「アレ、もう辞めどきだろうか?」
「冗談じゃないよ」
「だよな」
と軽妙なやり取りを交わしたという。
皮肉にも、ノバーラ戦でインザーギに代わって途中出場したFWパトは、延長戦の間に左太ももの肉離れが発生。全治1カ月の長期離脱を余儀なくされ、CLアーセナル戦への出場は絶望視される。中盤の選手にも故障続出で、今やミランの選手層に余裕はまったくない。
欧州第一の考えが強いミランにとって、コッパ・イタリアの優先度は最も低い。コッパ要員となったインザーギはなおミランに残るのか、それとも新天地を求めるのか。彼の見納めはいつになるのか――。
泥臭くてもカッコ悪くても、インザーギは「インザーギ流」でしか生きられない。彼が引退するのは、彼自身が完全燃焼したと感じるときだけだ。